2025年9月5日
山下清と、世界の天才たちとの共通点
2022年に生誕100年を迎えた画家・山下清(1922〜1971)。昭和〜平成の世代の方にはド
ラマ「裸の大将」でもお馴染みですね。彼の類稀な芸術性と、常人離れした貼り絵の技術
の秘密を追いながら、今なお高額で取引される人気の理由をご紹介していきます。山下清
の作品をお持ちの方、興味のある方であれば楽しんでいただけると思います。
■素朴な人柄からは想像できない緻密な作品
人気テレビドラマ「裸の大将」は、1980年6月1日に放送がスタート。放浪の画家・山下清
が旅先で出会う人々との交流を描いたコメディタッチのドラマで、17年続く長寿番組にな
りました。丸坊主に白いタンクトップ、朴訥と話しながらおにぎりを食べる主人公の姿を
覚えている方も多いのではないでしょうか。ダ・カーポの主題歌「野に咲く花のように」
も印象的でしたね。
主人公のモデルとなった山下清は、その才能と作品スタイル、波瀾万丈な人生から「日本
のゴッホ」と称された画家です。特に有名なのが貼り絵の作品ですが、そのほかにも油性
マーカーによるペン画なども高い評価を受けています。
代表作である「長岡の花火大会」の貼り絵を間近で見ると、大量の細かい紙片をびっしり
と敷き詰めた密度の濃さ、微妙にグラデーションする色彩の美しさ、夜空に広がる素朴で
きらびやかな花火の様子に圧倒されます。額の中に広がる緻密な世界は「本当に全部指先
でちぎってつくったのか?」と疑わしくなるほどです。
■類稀な創造力はどこからやってくる?
1922年、東京に生まれた山下清は、3歳の頃に重い消化不良を患います。完治はしたもの
の、言語障害や知的障害などの後遺症が残りました。その後10歳の時に父が他界。小学校
では後遺症が原因でいじめに遭うなど、彼の少年時代は決して明るいものではなかったよ
うです。
しかし、この頃から彼は飛び抜けた記憶力を示し、トランプで神経衰弱をすればすべての
カードの配置を覚えてしまいますし、大人でも書けない難解な漢字をパッと覚え、すらす
らと書くことができたといいます。これらの特徴は発達障害、とりわけ自閉症スペクトラ
ム症(ASD)患者に見られるサヴァン症候群と良く似ていることから、山下清もそうした
障害を抱えていたのではないかと推測されています。
サヴァン症候群とは、対人コミュニケーションを苦手とし、行動パターンに強いこだわり
をもつなどの障害を示す一方で、床にこぼした大量のマッチ棒を瞬時に数えたり、初めて
聴いた曲をすぐさまピアノで演奏できたり、数千年先の◎月◎日が何曜日であるか即答でき
たりといったある種の天才的な能力を発揮する人を指します。
山下清は旅先で見た景色を驚くほど詳細に記憶しており、先ほどご紹介した長岡の花火の
ような特定の瞬間を捉えた作品制作に役立てています。モーツァルトやトーマス・エジソ
ン、アインシュタインも近い種類の発達障害を抱えていたとされており、精神医学が発達
した現在、こうした資質が山下清の作品づくりを支えていたとする説も有力視されていま
す。
■若き天才画家として一躍時の人に
学校に馴染めず何度かの転校を経験した彼でしたが、12歳の時に通い始めた養護施設・八
幡学園でちぎり紙細工に出会います。ここで画用紙にちぎった色紙を貼り付けていく貼り
絵に夢中になった彼は、周囲の大人たちを驚嘆させる作品を次々と生み出していきました
。
16歳の時には初の個展を開催。梅原龍三郎や安井曾太郎などの巨匠たちから絶賛を浴び、
その才能は瞬く間に世間の注目を集めます。17歳の時に銀座で開催した個展では、人が集
まりすぎて画廊の床が抜けたというエピソードが残っていることからも、当時のフィーバ
ーぶりがうかがえます。
米国「LIFE」誌で取り上げられるなど時の人となっていた山下清。しかし1940年、18歳に
なった彼は突如として学園を飛び出し放浪の旅に出ます。突然の失踪に周囲は大慌て。朝
日新聞を巻き込み一大捜索キャンペーンを展開し、ほどなく九州・鹿児島で発見されます
。その後は失踪することもなくコツコツと制作をつづけ、49年という短い人生の多くを作
品づくりに捧げました。
■山下清作品が高額で取引される理由
代表作に日本全国を放浪しながら描いた「長岡の花火」「桜島」「日本平の富士」などが
あります。ただ、作品の多くが遺族によって保管されており、そもそも市場に出回ってい
る数が少ないことが高額で取引される一つの要因となっています。
また、山下清は画壇に所属しておらず、展覧会への出展や公的な記録が残っていないため
、真贋の鑑定が困難な作家です。さらに貼り絵は劣化が早く、保存状態の悪いものに関し
ては適切な修復を行わなければ、作品の価値を毀損してしまう可能性もあります。
当ギャラリーではこれまで貼り絵、ペン画、水彩画など多くの山下清の作品を取り扱って
きました。それらの経験を踏まえ鑑定を行っておりますが、困難なものに関しては必要に
応じて公式鑑定機関への依頼も行なっています。「これはもしかして?」と気になるもの
がお手元にございましたら、お気軽にご相談ください。
弊画廊にて、買取させていただいた山下清の作品と共に撮影いたしました
■山下清もそれ以外も 骨董・アートの高価買取は北岡技芳堂へ
北岡技芳堂では骨董品の他にも絵画や茶道具、貴金属、趣味のコレクションなど、さまざ
まなジャンルの品物を買受しております。ここ名古屋の地で長年にわたり取引を重ねてき
た実績をベースに、多種多様なニーズに対応できる販売チャネルをもつため、あらゆる骨
董品の高価買取を実現しています。
ご実家の片付けや相続などの際、手持ちの骨董品について「どうしたら良いか分からない
」という方も多くいらっしゃると思います。どのような品物でも、どのようなことでも構
いません。私たち北岡技芳堂にお任せください。出張買取も実施しています。愛知県、三
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お問い合わせください。
記事監修:北岡淳(北岡技芳堂 代表)
初代である祖父が掛け軸の表具師を生業としており、幼い頃から美術品や骨董品に親しむ。その後京都で
の修行を経て、3代目として北岡技芳堂を継承。2006年に名古屋大須にギャラリーを構え、幅広い骨董品
や美術品を取り扱いながらその鑑定眼を磨いてきた
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