2025年5月18日

茶道で使われる「鉢」は、茶事の懐石や薄茶の席で用いられます。 茶道具買取ブログ

茶道における「鉢」の定義と用途

茶道で使われる「鉢」は、食物や菓子を盛るための広口の器で、茶事の懐石や薄茶の席で用いられます。大ぶりな器であるため、取り回しがしやすく、盛りつけが映えるという実用性を持ちながらも、その形・釉薬・素材・意匠に、亭主の趣向や季節感が反映されます。

鉢の中でも茶道具として分類されるものは、大きく分けて以下のような用途に用いられます。

 

 

鼠志野草花文鉢

鼠志野草花文鉢 桃山時代 高 8.8cm 口径 31.8cm

本作は、灰白色の陶胎により成形された大型の鼠志野鉢である。内面中程にゆるやかな段差を設け、底部は浅くくぼんでおり、ゆったりとした丸みをもって立ち上がる胴部が外側に広がっている。口縁は三方にわたって下方向へ反り返るように山道状のうねりをつくり、不整な円形に仕上げられている。

成形は轆轤による水挽きののち、手で変化を加えたもので、底は緩やかな丸底とし、三か所に小さな粘土板を曲げて貼り付けた脚を備える。外面底部の中央と、内面体部の上半には、それぞれ丸形および三日月形の掛け残し部分が設けられ、そこに表情の変化を生んでいる。

素地全面には鬼板(鉄分を多く含む赤土)による化粧掛けが施され、文様は鼠志野独特の技法である掻き落としによって表現されている。表面全体には長石釉が掛けられ、滑らかな光沢を湛える。口辺には二重圏線をめぐらせて画面を区画し、三方に宝尽くし文や幾何学文を意匠として配している。

内面下部には二重線で地面が描かれ、その上に太湖石、両側には籬(まがき)を表現。そこから伸びるように女郎花(おみなえし)風の草花文が、器面いっぱいに大胆にあらわされている。鬼板下地部分は線刻で描写され、掛け残しの白地には鉄絵具による筆致が用いられている。

高台裏の三つ脚の両側には、それぞれ目跡(支焼痕)が残されており、焼成時の姿を今に伝えている。

 

 

尾形乾山作 色絵竜田川文透彫反鉢

尾形乾山作 色絵竜田川文透彫反鉢 重要文化財

本作《色絵竜田川文透彫反鉢(いろえ たつたがわもん すかしぼり そりばち)》は、江戸中期を代表する陶工・尾形乾山による作品であり、その斬新な造形と絵画的な装飾から、重要文化財に指定されている名品です。

鉢の器形は、やや外反する口縁を持ち、全体に柔らかな曲線を描く優美な姿をなしています。特筆すべきは、**透彫(すかしぼり)**と呼ばれる技法を用いて、器体に透かし模様を施している点で、これは陶器において極めて高度な技術と意匠性を要するものです。

意匠には、**竜田川(たつたがわ)**を主題とした紅葉流れの図が色絵で描かれ、秋の風情が巧みに表現されています。竜田川は古来、紅葉の名所として和歌や絵画に頻繁に詠まれた題材であり、乾山もまたその日本的美意識を作品に託しています。

乾山は、兄・尾形光琳との芸術的連携によっても知られ、絵画と陶芸の融合という独自の美学を確立しました。乾山焼には、光琳の画風を写したものや、画中の世界を陶器の上に展開させたものが多く見られ、本作もそうした琳派的世界観と陶芸の技術が見事に結びついた逸品です。

京焼の名工・野々村仁清の作風を継承しながらも、乾山はより自由で詩的な表現を試み、陶芸における芸術性の幅を大きく広げました。絵付けには金銀彩や繊細な筆致が駆使され、装飾が器形と一体化する乾山独特の美意識が光ります。

色絵竜田川文透彫反鉢は、そのような乾山芸術の真髄を体現した作品であり、日本陶芸史上、また装飾芸術史上においても極めて重要な位置を占めています。

 

 

 

茶道具における「菓子鉢」の役割と特徴

 

茶道において菓子鉢とは、主菓子を盛るための器であり、薄茶の点前において用いられます。点前の前に菓子を供するという作法上の意味を持ち、菓子の内容とともにその季節感や設えの趣向を示す大切な茶道具のひとつです。

 

通常、陶磁器や漆器、木工、ガラスなど多様な素材で作られ、形式や大きさにも幅があります。菓子器と呼ばれる道具のうち、「菓子鉢」は比較的大ぶりな器を指すことが多く、複数人分の主菓子を盛るのに適しています。

 

表千家では「食籠(じきろう)」が主に用いられるのに対し、裏千家や武者小路千家では菓子鉢も多く使用されます。ただし、流派や席の趣向によって選定される器は変化し、作家ものの陶磁や民芸調の器、古道具や唐物なども重宝されます。

 

代表的な菓子鉢としては、仁清写・色絵・青磁・伊万里・唐津・萩・楽焼などがあり、季節や茶席の格調に応じて選ばれます。夏場にはガラスや籠もの、冬には漆器や焼締めが好まれる傾向も見られます。

 

近年では、茶道具専門の作家による意匠を凝らした現代的な菓子鉢も人気があり、道具組の中で個性を出す要素としても重視されています。

 

 

古染付芙蓉手鹿文菓子鉢

古染付芙蓉手鹿文菓子鉢 明時代末 17世紀初頭

本作は、明代末期の景徳鎮窯で焼かれた古染付の一種で、「芙蓉手(ふようで)」と呼ばれる様式を示す菓子鉢である。芙蓉手とは、器面を花弁状の輪郭で区画し、そこに動物や植物、文様を描き分ける装飾手法で、17世紀初頭に景徳鎮で盛んに作られ、日本向けに大量に輸出された磁器様式である。

本品はやや大振りの鉢形で、見込み中央に鹿と松をあしらった図様が染付で描かれている。鹿は古来より長寿や吉祥の象徴であり、松とともに「延年益寿」の意をもつ組み合わせである。周囲には芙蓉花を思わせる花弁型の区画をめぐらせ、それぞれに唐草文や波文などを配し、装飾性を高めている。

染付の発色はやや滲みをともない、素朴ながらも柔らかな趣がある。これは古染付特有の鉄分を含んだ呉須によるもので、近代以降の精緻な染付とは異なる、茶人好みの「景色」を生み出している。

底部は高台付きで、見込みから胴にかけて緩やかに立ち上がり、鉢としての実用性と美観が両立されている。こうした器形や文様構成は、当時の茶人たちに「用の美」として愛され、茶席での菓子鉢、または向付として珍重された。

芙蓉手の古染付は、「民窯」由来の自由な筆致と、意匠の豊かさ、素朴さ、そして呉須の味わい深さが魅力であり、日本の茶道文化の中で独自の価値を築いてきた。とりわけ鹿文は数が少なく、吉祥性が強いため、茶会の取り合わせにおいて格調を添える一品として高く評価されている。

 

 

1. 菓子鉢(かしばち)

薄茶の席において、主菓子を盛るための鉢。陶磁器や漆器、ガラス、木地などで作られ、季節に応じた表情を見せる。見た目の美しさが特に重視される。

 

2. 向付鉢(むこうづけばち)

茶事の懐石で主菜や副菜を盛る鉢状の向付。形や寸法はさまざまで、現代では現代陶芸作家による自由な造形も多く取り入れられている。

 

3. 大鉢・共鉢(ともばち)

複数人で取り分ける大鉢。茶懐石では煮物や酢の物を盛る。共鉢とは取り皿と組になっている鉢のことを指す。

 

 

 

永樂保全作 三彩龍文鉢 江戸時代 19世紀

永樂保全作 三彩龍文鉢 江戸時代 19世紀


本作は、京焼の名工・永樂保全(えいらく ほぜん)による三彩龍文鉢で、江戸時代後期、19世紀に制作されたものである。胎土は陶質で、高さ9.2cm、口径17.3cm、高台径7.1cmを測る。高台内には「永樂」の印銘が入る。

器形は口縁をやや開き気味とし、全体に安定感のある立ち上がりを見せる。見どころは外面を彩る三彩の龍文装飾である。文様の輪郭線を盛り上げることにより、釉薬同士の混濁を防ぎつつ、文様をくっきりと際立たせるこの技法は、中国明代の法花(ほうか)技法に着想を得たものと考えられ、保全が中国陶磁の表現を自家薬籠中のものとしていたことを示す好例である。

龍の姿は力強く躍動的であり、黄・緑・白の釉薬による三彩の色調が、器面に華やぎと格調を添えている。このような釉薬表現と文様構成は、永樂家の中でも特に交趾焼・色絵・金襴手などを自在に操った保全期の特色と合致しており、彼の卓越した造形感覚と釉調技術を示す優品といえる。

永樂保全(1795–1854)は、京焼の永樂家十一代として、仁清写から中国陶磁の写し、さらには独自の意匠に至るまで、多彩な作品を生み出した。保全の作品群は、単なる写しを超えて、意匠と技術を融合させた茶陶芸術としての独自性を備えており、茶人や宮中にまで愛好された。

この三彩龍文鉢もまた、そうした京焼の伝統と異国的装飾性の融合を体現した一碗であり、江戸後期における茶陶の豊かな展開を示す貴重な作例である。

 

 

 

茶の湯における鉢の美学

茶道では、器は単なる入れ物ではなく、「もてなしの象徴」です。鉢の形や手触り、色合い、重みまでもが、客に対する気配りや趣向を伝える手段となります。特に鉢は、料理や菓子と一体となって茶席の情景を構成する役割を担うため、その選定には高い審美眼が必要です。

 

 

茶道具における「菓子鉢」の役割と特徴

茶道において菓子鉢とは、**主菓子(おもがし)**を盛るための器であり、薄茶の点前において用いられます。点前の前に菓子を供するという作法上の意味を持ち、菓子の内容とともにその季節感や設えの趣向を示す大切な茶道具のひとつです。

通常、陶磁器や漆器、木工、ガラスなど多様な素材で作られ、形式や大きさにも幅があります。菓子器と呼ばれる道具のうち、「菓子鉢」は比較的大ぶりな器を指すことが多く、複数人分の主菓子を盛るのに適しています。

表千家では「食籠(じきろう)」が主に用いられるのに対し、裏千家や武者小路千家では菓子鉢も多く使用されます。ただし、流派や席の趣向によって選定される器は変化し、作家ものの陶磁や民芸調の器、古道具や唐物なども重宝されます。

代表的な菓子鉢としては、仁清写・色絵・青磁・伊万里・唐津・萩・楽焼などがあり、季節や茶席の格調に応じて選ばれます。夏場にはガラスや籠もの、冬には漆器や焼締めが好まれる傾向も見られます。

近年では、茶道具専門の作家による意匠を凝らした現代的な菓子鉢も人気があり、道具組の中で個性を出す要素としても重視されています。

 

 

茶道における菓子鉢の位置づけ

 

茶道では、濃茶と薄茶という二種類の点前がありますが、菓子鉢は主に薄茶席で使われます。茶をいただく前に、甘い主菓子をいただくことは、茶の渋みを和らげ、味わいを引き立てるとされており、菓子の器にも深い配慮が求められます。

茶事や茶会では、亭主が選んだ菓子鉢に、その日の菓子を美しく盛り付け、季節やテーマを演出します。例えば、春には桜を意匠とした陶器、夏には涼やかな硝子鉢、秋には赤絵や織部の渋み、冬には漆器や楽焼の温かみを活かすなど、菓子鉢の選定はもてなしの美学そのものです。

 

 

 

呉須赤絵花卉文鉢 明時代 17世紀 高 9.4cm 口径 20.8cm 底径 7.0cm

本作は、明時代末(17世紀)に中国・景徳鎮で焼成された磁器鉢で、いわゆる「呉須赤絵(ごすあかえ)」と呼ばれる様式に属する優品である。呉須赤絵とは、コバルトによる下絵(呉須染付)に加え、焼成後に赤・緑・黄などの上絵付を施した色絵磁器で、明末期に盛んに制作され、日本の茶人たちにも愛好された。

器形は、やや丸みを帯びた碗形で、口縁に向かって広がる穏やかな曲線を描く。高台は比較的高く、底部に向かって締まった端正な造形となっており、鉢としての実用性と鑑賞性を兼ね備えている。

見込みおよび外面には、**草花文様(花卉文)**がびっしりと描き込まれており、濃淡のある呉須で描かれた線描を下地に、赤絵・緑彩・黄釉が華やかに加飾されている。こうした華やかさと奔放さは、明末の民窯作品に特有のものであり、細部には素朴な筆致が残され、人の手の温もりを感じさせる表現が魅力である。

呉須赤絵は、同時期に隆盛した五彩とは異なり、民間向けに大量生産された背景があるが、むしろその自由で即興的な意匠こそが、侘びを尊ぶ日本の茶人にとって格別の美と映った。特に鉢物は、菓子鉢や向付として茶席で重用され、名物茶道具として伝世している例も多い。

本作もまた、そうした茶陶としての文脈にふさわしい器であり、装飾性と実用性、そして時代の息吹を宿した表現が見事に調和している。茶道具として用いる際には、季節の和菓子や料理の彩りを引き立て、席中に異国の雅趣を添える器として好適である。

 

 

菓子器に表れる季節と美意識

 

茶道においては「季節感」が極めて重視されるため、菓子と菓子器の取り合わせによって、客に季節の移ろいを伝えます。

 

  • 春:桜や梅の絵付、青磁や淡い色調の陶器

  • 夏:硝子や青竹、白磁や籠もの

  • 秋:赤絵や織部、実りをあらわす絵柄

  • 冬:黒漆や楽焼、温かみのある焼締め

 

このように、菓子器は単なる実用品ではなく、亭主の趣向と茶の湯の哲学を映す表現媒体といえるでしょう。

 

 

懐石料理における「鉢」とは

 

懐石では、客の前に一品ずつ順番に料理が運ばれます。その中で「鉢」は、向付・汁・飯に続く四番目に出されることが多く、主菜あるいは煮物を盛る器として用いられます。料理の核となる一皿を盛るため、器としての存在感も重要視されます。

 

主な役割

 

  • 煮物鉢(にものばち):魚や野菜などを煮た主菜を盛る。

  • 焼物鉢(やきものばち):焼き物の主菜を盛ることもある。

  • 多人数用の共鉢(ともばち):取分け形式で使う大鉢。

  • 強肴鉢(しいざかなばち):酒の肴としての副菜用。

 

 

 

茶道における「鉢」の美学

 

懐石の鉢には、器と料理が一体となって美を成すという茶道特有の美意識が込められています。たとえば、地味な焼締の鉢に淡い色合いの野菜を盛ることで、料理の色が引き立ち、侘びの趣が表現されます。

 

また、亭主の趣味や審美眼が器選びに現れるため、鉢は茶席全体の雰囲気を大きく左右する存在とも言えます。名工の作や、古陶磁の逸品などが用いられることもあります。

 

 

茶道具における鉢の美と価値

茶道具としての「鉢」は、単なる盛り付けの器にとどまらず、亭主の趣向や季節感、もてなしの心を象徴する重要な道具として位置づけられています。茶会や茶事では、菓子鉢、煮物鉢、向付鉢など、さまざまな種類の鉢が用いられ、茶の湯の美意識と深く結びついてきました。

たとえば、鼠志野や古染付、呉須赤絵、三彩釉、京焼の色絵鉢などは、時代を超えて茶人に愛されてきた名品であり、器形の造形美、絵付の技法、釉薬の景色などが高く評価されています。また、江戸期の永樂保全や仁清写、尾形乾山らの手による鉢も、絵画的な構成と茶陶としての完成度により、現在でも収集家や茶道具愛好家からの人気が根強くあります。

特に、茶席で使用された来歴のある鉢や、箱書・共箱付きの作家物、保存状態の良い古陶磁の鉢は、市場価値も高く、高額査定が期待されるお品です。

 

 

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