2025年10月28日
実体のないデジタル世界を形にする彫刻家 〜北岡技芳堂の骨董品買取りブログ〜
現代アートがとる形は多種多様です。絵画や彫刻、音楽だけでなく、肉体を使ったパフォーマンスから先進テクノロジーを駆使したデジタル作品、さまざまなメディアを組み合わせたインスタレーションまで、ありとあらゆる表現方法が取り入れられています。今回ご紹介する名和晃平(1975〜)の肩書は「彫刻家」ではありますが、木や金属を削る一般的なイメージの彫刻ではなく、まったく新しいアプローチによる造形に挑み続けている作家です。今回は、世界から注目を集めるこの気鋭のアーティストをご紹介します。
■アートとサイエンスの融合で彫刻を拡張
名和晃平は1975年京都生まれ。父親が実家で子供向けのクラフトワークショップを開催していたこともあり、小さい頃から絵や版画、彫刻などに親しみました。学生時代はこれといった明確な目標がなく進路に迷いましたが、京都市立芸術大学で彫刻と運命的な出会いを果たします。大学院に進学後、ロンドンのRCA(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)に留学。ここで初めて「現代美術こそが自分の生きる道」だと確信をもちました。
それというのも、名和が留学した1999年は美術史上で何度目かの「絵画は死んだ」と言われていた時期で、世界中のアートシーンからニューペインティングなどの新しい概念が続々と生まれていました。その渦中に身を置くことで「現代美術は単に今新しいものをつくるだけではない。宗教芸術から連綿と続くコンテクストの上に積み木を置いていく行為だ」ということに気づくことができたのです。さらに当時のイギリスでは「YBAs(ヤング・ブリティッシュ・アーティスツ)」と呼ばれる若手作家が活躍しており、彼らの斬新かつコンセプチュアルな取り組みに強く影響を受けました。その過程で「日本の彫刻教育では教わらない、素材と意味の関係の自由さ」を発見し、帰国後の活動指針の一つになりました。

名和 晃平 PixCell-Red Deer 2012 mixed media h.209 x w.163 x d.194.5 cm
もう一つ、名和晃平は科学を愛する少年でした。アインシュタインやガリレオなどに関する本を好み、高校では美術部と数学研究部を掛け持ちしたほど。そうしたバックグラウンドから、学生時代はアートとサイエンスを分け隔てなく学びます。透明な球体による巨大な鹿の造形物「PixCell」シリーズは、こうした背景から生み出されました(詳細は後述)。
2002年の帰国後はPixCellシリーズのほかにも「自然も人工物もすべては粒子の集合である」という認識を形にした「LIQUID(リキッド)」シリーズをはじめ、デジタル時代の知覚をいち早く美術に取り込み、その先進性が注目を集めます。2009年にはサンドイッチの廃工場をリノベーションした「SANDWICH」という創作拠点を京都に構え、アート、建築、映像、ファッションなどジャンルを横断したクリエイターたちが協働できるスペースを創出しました。2011年には東京都現代美術館で大規模個展「SYNTHESIS」を開催。これまでの作品を体系的に紹介したこの展示は、多くの批評家から「彫刻の定義を拡張した」と絶賛され、名和の評価を決定づけることになりました。
その後2016年のフランスの振付師・ダミアン・ジャレとのコラボレーションや、2018年の京都・清水寺インスタレーションなどの発表により国際的評価も高まり、日本の現代アーティストとして初めてアメリカのメトロポリタン美術館に作品が収蔵されます。2020年代に入ってからはAR・AI・3Dスキャンなどの新技術を活用し、情報と身体の関係性を再構築した作品を発表。国内外の批評家から「ポスト・デジタル時代の彫刻家」として位置づけられるなど、現代アートの最前線をひた走っています。
■デジタルの概念を現実世界に取り出す
先ほども少し触れましたが、鹿の剥製を大小さまざまなガラス玉で覆った「PixCell-Deer」をはじめとしたPixCellシリーズが彼の代表作です。このPixCell というのは「Pixel(画素)」と「Cell(細胞、粒、器)」を組み合わせた造語で、大きさの異なる透明な球体越しに鹿を見ると、くるくると球体に映る像が移り変わり、改めて私たちが世界をたくさんのレンズの重なりとして捉えていることを知覚できます。「表面をレンズで覆うことで光学的なエフェクトをかけ、映像性を帯びたオブジェクトへの変換を図る」とのコンセプトで制作された作品は、高度情報化が進む時代の空気感を見事に捉えました。
また彫刻を空間の一部と捉え、展示スペース全体をプロデュースするインスタレーションの制作にも熱心に取り組みます。GINZA SIX(東京都中央区)の吹き抜け空間を埋め尽くす巨大な鹿や噴き上がる雫のイメージから構成される「変容の庭」(2021)は、彫刻にスマートフォンのアプリケーションをかざすことで、名和の彫刻とARイメージが調和しながら変容する様子を楽しむことができ、ダミアン・ジャレとのコラボも話題を呼びました。そのほかにも高さ13メートルのアルミ彫刻「Manifold」(韓国)や、ルーヴル美術館のガラスピラミッド内に展示された金箔仕上げの巨大作品「Throne」、金沢21世紀美術館で行われた巨大な泡によるインスタレーション「Form」など、設置した空間そのものを変えてしまうスケールの作品も多く生み出しています。
デジタル世界の概念を、質量を持つ物体へと変換させるために、さまざまな素材やテクノロジーを駆使しながら先鋭的な造形、空間表現を追求してきた彼。生成AIが日常生活に当たり前のように入り込むなど、変化を続ける人間とデジタルの関係性を今後どう描き出していくのか、さらなる表現の進化が期待されています。
■作品の価値は?
2021年に全高2mを超える鹿の剥製作品「PIX-CELL DEER 23」が9,200万円を超える高値で落札されるなど、近年は美術市場から大きな注目を浴びています。2024年に香港のオークションでも鹿の腰部剥製をガラス玉で覆った「PixCell-Deer #10」が7,900万円で落札されており、国内外で現在も変わらず高い評価を得ています。ドローイングやシルクスクリーン作品は比較的多く流通しているものの、代表作である立体作品の流通量は少なく、もし市場に出された場合は高額での取引が必至です。お手元にお持ちの方は大切に保存していただき、価値が気になる方はぜひ当ギャラリーにご相談ください。責任をもって査定させていただきます。
■名和晃平の作品もそれ以外も 骨董・アートの高価買取は北岡技芳堂へ
北岡技芳堂では現代アートの他にも骨董品や絵画、茶道具、貴金属、趣味のコレクションなど、さまざまなジャンルの品物を買受しております。ここ名古屋の地で長年にわたり取引を重ねてきた実績をベースに、多種多様なニーズに対応できる販売チャネルをもつため、あらゆる骨董品の高価買取を実現しています。
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記事監修:北岡淳(北岡技芳堂 代表)
初代である祖父が掛け軸の表具師を生業としており、幼い頃から美術品や骨董品に親しむ。その後京都での修行を経て、3代目として北岡技芳堂を継承。2006年に名古屋大須にギャラリーを構え、幅広い骨董品や美術品を取り扱いながらその鑑定眼を磨いてきた。
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骨董品の買取【北岡技芳堂 名古屋店】
愛知県名古屋市中区門前町2-10
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