2025年9月13日

沈む色彩を、科学の力でパッと明るく

現在、愛知県の豊田市美術館で「モネ展」が開催されています。(2025年9月15日までですので、まだの方はお急ぎを!)モネのほかにルノワールやドガ、マネなどの画家たちをまとめて印象派と呼びますが、その名前の雰囲気からなんとなく「情景を絵にした一派」といったざっくりした認識を持たれがちです。しかし革新を目指す彼らは、実はかなり挑戦的・実験的なアプローチをとったことでも知られています。ここでは新印象派とも呼ばれるジョルジュ・スーラの作品を取り上げながら、当時の画家たちがどのような方法で新しい表現を生み出していったのか、その一例をご紹介します。

 

■旧弊を打破した若い画家たち

長い間、写実的な歴史画や宗教画を題材としてきたフランスの美術界でしたが、19世紀に入り徐々に潮目が変わり始めます。その契機の一つとなったのが写真機の登場です。自分や家族の肖像を絵に残すことは、中産階級以上の家庭にとってのステータスでした。しかし、これらの顧客が写真館に流れはじめ、一部の商業画家は食い扶持を失いつつあったのです。

自らの絵画が持つ価値をいかに高めるか。その可能性を追い求めていた画家らは「これからは写実的な肖像画や宗教画などではなく、日常の風景や人々が働く姿などの現実をありのままに描きたい」と新しいスタイルの作品づくりを目指します。しかし、伝統を重んじるサロン(官展)は「ノン!」と突き返してしまうのです。そのことに不満を爆発させた若手画家たちによる一大ムーブメントが「印象派」です。例えば、裸体を描くにしても「女神ならいいけど人間はダメ」という時代に、エドゥアール・マネは人間の女性が裸で水浴びする姿(しかも娼婦!)を描きました。この「草上の昼食」を発表するやいなやサロンが上へ下への大騒ぎになったというのですから、当時の閉鎖的な雰囲気と、それらを打ち破る彼らのラディカルさがお分かりいただけるかと思います。

 

 

クロードモネ 睡蓮 1916年〜1919年 キャンバス 油彩

クロードモネ 睡蓮 1916年〜1919年 キャンバス 油彩

 

 

■科学的な「点描」技法

代表作に「グランド・ジャット島の日曜日の午後」などがあるジョルジュ・スーラ(1859〜1891)は、モネら印象派が確立したスタイルをさらに一歩前に進めた「新印象派」の一人として知られています。

印象派はもともと、屋内でつくられた構図を描くのではなく、自然の中の一瞬を切り取って絵にしたいと考えていました。この時、最難関となったのが「移ろう光をいかに描くか」というテーマです。例えば夕暮れを描くために、黄色と赤の絵の具を混ぜるとします。これで確かにオレンジ色はつくれるのですが、異なる物質が混ざることでどうしても色が濁ってしまい、発色が暗くなってしまいます。そこで印象派の画家たちは絵の具を混ぜずにカンバスにポンポンと色を置いていく「筆触分割」という技法を考案しましたが、後にスーラはこれをさらに発展させた「点描」技法を編み出しました。

点描はフランスの化学者・シュヴルールの光学論を取り入れたもので、例えばオレンジであれば、黄色を一面に塗り、その上に赤い点を置いていくことで鮮やかな発色を実現させるという技法です。シュヴルールの「色は関係で決まる」という科学的知見を、スーラは絵画の分野に持ち込み実践することで融合を果たしました。こうした計算された緻密さが新印象派の作品の特徴で、この後に続く後期印象派であるセザンヌやゴッホへとつながっていきます(ゴッホも点描技法を取り入れた作品を制作しています)。さまざまな画家たちが理想に燃え、新しい表現を模索していたこの熱量こそが、印象派時代の魅力の一つといえるのではないでしょうか。

 

ジョルジュ・スーラ グランド・ジャット島の日曜日の午後 油彩 キャンバス

ジョルジュ・スーラ グランド・ジャット島の日曜日の午後 油彩 キャンバス

 

■特に高額な19世紀の印象派作品

2011年のオークションで、セザンヌの「カード遊びをする人々」が2億5000万ドル(約385億円)落札。2019年にはモネの「積みわら」がおよそ1億1000万ドル(約120億円)で、2024年には「睡蓮」が6550万ドル(約101億6000万円)で落札されるなど、19世紀印象派の作品はびっくりするような高額で取引されています。

近代美術の出発点といえる歴史的な価値、すでに美術館やコレクターが買い漁っているため市場にほぼ出回らない希少性、誰の目にも美しく鑑賞しやすいものが多いことなどから、アート作品の中でも特に人気で高額取引されています。そのブランド価値は高まる一方で、もしまだ世に出ていない作品を発掘したら世界的ニュースになるかもしれません。

 

 

セザンヌ カード遊びをする人々 キャンバス 油彩

セザンヌ カード遊びをする人々 キャンバス 油彩

 

 

■印象派作品もそれ以外も 骨董・アートの高価買取は北岡技芳堂へ

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記事監修:北岡淳(北岡技芳堂 代表)

初代である祖父が掛け軸の表具師を生業としており、幼い頃から美術品や骨董品に親しむ。その後京都での修行を経て、3代目として北岡技芳堂を継承。2006年に名古屋大須にギャラリーを構え、幅広い骨董品や美術品を取り扱いながらその鑑定眼を磨いてきた

 

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