山本梅逸「牡丹」の掛軸を買取いたしました。梅逸は、江戸時代後期の文人画家です。筆技を駆使した華麗な花鳥画で知られ、特に山水画や花鳥画を得意としていました。

花鳥以外にも山水や中国故事を描いた道釈画も多く、身の回りの生活風景を漫画風に描いた風俗図なども残しています。

画風は円山四条派の写実性・装飾性に影響を受けており、明清の古書画の研究から模倣に陥ることなく、繊細で優麗な独自の画風を築き上げました。

牡丹の花びらの部分の描写がすごいですね。

山本梅逸（やまもと ばいいつ）は、1783年に名古屋天道町（現在の中区大須）に生まれました。弊社は大須に店を構えて20年ほどとなりますが、この町にゆかりのある作家の作品は、買取をした後になかなか売ることができず、手元に残しておきたくなってしまいます。

梅逸の父・山本有右衛門は欄間の彫刻師だったとされますが、記録は残っていません。

梅逸が12歳のときに父親が亡くなり生活は貧窮しましたが、母は子供の教育に心掛け、和歌の手解きをしたそうです。梅逸は幼少から画才に恵まれ、見事な襖絵を描きあげて周囲を驚かせたという逸話もあるほどです。

幼い時から画を好み、地元の絵師・山本蘭亭に学んでいましたが、蘭亭は梅逸の画才を見抜き張月樵に入門させました。

その後、中国書画のコレクターであった豪商・神谷天遊宅に寄宿し、天遊に理論面の指導を受けつつ、そのコレクションを手本として修行を積みました。天遊の元で、生涯の盟友となる7歳年長の中林竹洞とも出会います。

天遊に連れられ万松寺に出向いたとき、中国元代末期の画家・王冕（おう べん）の「墨梅図」を見て深く感銘したことから、梅逸の号を授けられたといわれています。

同じくこのとき、兄弟子の竹洞は元の文人画家・李衎（りかん）の「竹石図」に感銘したことからその号を与えられたといわれています。

1802年、19歳のときに天遊が亡くなり、竹洞とともに上京します。古寺を巡っては古画を模写して修行を積み、明末の文人の山水画を購入するなど書画の収集にも傾注しました。

二人は新天地を求め上洛しましたが、京都画壇の壁は厚く、画業は停滞してしまいます。また竹洞の父の危篤の報もあり、一旦は名古屋に戻ることとなりました。

30歳頃までには名古屋で知られた画家となり、京都や江戸を往来して各地の文化人と交友を結びました。

1830年、名古屋で藩主の命により朝鮮から来た豹を写生しました。その他にも、山陽・四国・北陸にも脚を伸ばしています。

1832年頃から再び京都に出て居を構え、以降画家として認められていきます。竹洞とは対称的に写生を基とした花鳥画を得意とした梅逸は、精細で華美な画調を作り上げ、京都では竹洞に次ぐ文人画家として名を高めました。

書画会の出品も多く、次第に京阪で人気の画家となり、年収が200両にもなったといいます。現在の価値にしてみますと、かなりの金額になりますね。

頼山陽や貫名海屋、浦上春琴らと交流し、煎茶に親しみ、そのお茶は梅逸流と称されました。1844年には、煎茶会席を彩る席飾りの図案集『清娯帖』を描き、煎茶会図録の嚆矢とされる『茗讌品目』（嘉永五序）を刊行、名古屋の煎茶普及にも一役買っています。

楽や俳歌、茶もたしなみ、特に茶道具については目利きとしても知られていました。さらに、笛や陶芸も趣味にしていたそうです。

日本各地に遊歴し、江戸では漢詩人・大窪詩仏と交流、尾張藩主の邸宅で谷文晁とともに画作も行っています。

1853年、竹洞が亡くなります。京都で23年間活動を行いましたが、翌年の1854年に尾張藩御用絵師格として取り立てられ、御用人支配の地位を得ました。帯刀、拝謁も許され御園町（現在の名古屋市中区）に移り住みました。

晩年は故郷の名古屋で暮らし、1856年に74歳で亡くなりました。梅逸は千種区平和公園の洞仙寺墓地に眠っています。

北岡技芳堂では、山本梅逸の作品の査定、買取を行っております。ご不明な点などございましたら、お気軽にご連絡ください。

掛軸の買取につきましては、よろしければこちらもご覧ください。
https://gihodo.jp/kakejiku/

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