香月泰男の水彩画を買取いたしました。素朴な構図とあたたかみのある色彩で、画面いっぱいに熟した柿が5つ、机の上に並べられています。

サインから、1957年11月26日に描かれたものとわかります。このことから、香月がシベリア・シリーズ以前、または並行して描いていた比較的穏やかな主題の作品と時期的に一致しており、日常のモチーフにも繊細なまなざしを向けていたと考えられます。

戦後日本を代表する洋画家の一人である香月泰男は、1911年に山口県大津郡三隅村（現在の長門市三隅）に生まれました。

医師の家に生まれながらも、幼い頃に両親が離婚し、厳格な祖父のもとで育てられました。地元の旧制中学校を卒業後、川端美術学校を経て、1931年に東京美術学校（現在の東京藝術大学）へ進学し、藤島武二に師事しました。

在学中から国画会展に出品し、1934年には「雪降りの山陰風景」が入選します。その後、同会の奨学賞や佐分賞を受賞し、若くして注目を集めました。1936年に卒業後は北海道の倶知安中学校に赴任し、のちに山口県下関の高等女学校でも教壇に立ちました。

しかし、1943年に召集を受けて旧満州へ出征します。終戦後はソ連軍の捕虜としてシベリアのセーヤ収容所に抑留され、過酷な強制労働に従事します。この抑留体験が、彼の画業における生涯の主題となりました。

1947年、帰国後は教職に戻りつつ創作活動を再開、1949年に東京・銀座のフォルム画廊で初個展を開催し、その後も毎年出品を続けました。1960年に教職を退き、画業に専念します。1966年には九州産業大学の芸術学部創設にあたり、主任教授として招聘されました。

彼の代表作である「シベリヤ・シリーズ」は、シベリア抑留の体験をもとにした油彩画57点から成り、単なる反戦や記録を超え、人間の尊厳と孤独を描いたものとして高く評価されています。1969年にはこのシリーズにより、第1回日本芸術大賞を受賞しました。

香月は1974年に62歳で亡くなる直前まで、生まれ育った三隅の地で、自然や家族、記憶を描き続けました。没後、遺族によって「シベリヤ・シリーズ」の多くが山口県に寄贈され、1979年に開館した山口県立美術館に常設展示されています。

彼の作品は、美術と文学の深い結びつきを現代に甦らせたものとして、戦争体験世代だけでなく、若い世代にも深い感動を与え続けています。

北岡技芳堂では、香月泰男の油彩画、水彩画、リトグラフ、セラミックなどの査定、買取を行っております。ご不明な点などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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【香月泰男 略歴】

1911年10月25日
山口県大津郡三隅村久原（現・長門市三隅下）に生まれる

1931年
東京美術学校（現・東京藝術大学）に入学。藤島武二に師事

1934年
「雪降りの山陰風景」が国画会展で初入選

1936年
北海道庁立倶知安中学校の美術教師として赴任

1938年
山口県立下関高等女学校（現・山口県立下関南高等学校）に転任

1939年
梅原龍三郎、福島繁太郎の知遇を得る

「兎」が第3回文部省美術展覧会で特選

1943年
応召し、旧満州ハイラルに配属される

1945年
終戦を迎え、シベリアに抑留される

1947年
引揚船「恵山丸」で舞鶴に帰国

山口県立下関高等女学校に復職

1948年
山口県立深川高等女学校（現・山口県立大津緑洋高等学校）に転任

復帰後初の作品「雨＜牛＞」を発表

1949年
フォルム画廊で初の個展を開催。以降、毎年個展を開催

1960年
教職を辞し、画業に専念

1969年
第1回日本芸術大賞を受賞

1974年3月8日
心筋梗塞のため自宅にて死去

1974年11月
「シベリヤ・シリーズ」が山口県に寄贈される

1979年
山口県立美術館が開館し、館内に「香月泰男記念室」が設けられる

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※買取価格は制作年、作風、状態などにより相場が変動いたしますので、
掲載されている金額は、ある程度の目安としてご参考にしていただけますと幸いでございます。

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