買取実績

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工芸品
山内一生 和紙工芸
- 買取地区:
- 名古屋市内
- 買取方法:
- 店頭買取
参考価格¥20,000
山内一生の小原和紙の作品を買取いたしました。日本の伝統美と自然の息吹を感じさせる和紙工芸ですが、その世界で「和紙工芸の第一人者」と称されたのが山内一生です。
東海地方では、特に有名な作家としてご存知の方も多いのではないでしょうか。作品数が市場に多く出回っているということもあり、なかなか一点ずつお値段をお付けすることが難しため、数点まとめてお買取をさせていただきました。誠にありがとうございました。
愛知県豊田市出身の山内一生(やまうち いっせい/かずお)は、旧・挙母中学校(現・豊田西高校)を卒業後、戦時中に疎開していた地、小原村で出会った工芸作家・藤井達吉に師事し、和紙工芸の道に進みます。
様々な色彩の和紙を何層にも重ねて制作する独自の手法によって、まるで絵画のような深みと幻想的な色合いを生み出し、他に類を見ない芸術世界を築き上げました。
富士山や鶴、花々などの伝統的な題材をモチーフが多く、自然に対する深い敬意と、四季折々の移ろいを慈しむ日本人の美意識が色濃く反映されています。
1953年には日展に初入選し、以降は日展審査員、評議員、参与を歴任し、国内の工芸美術界で確固たる地位を築きました。
1997年の内閣総理大臣賞(第29回新日展)、1984年には日本新工芸展で文部大臣賞、2012年の日工会展における再度の内閣総理大臣賞を受賞するなど、数々の名誉に輝きます。
「かずお」という本名とは別に、「いっせい」の名で創作活動を行い、その屋号も「山内いっせい工房」とし、作品への揺るぎない信念と誇りを込めてきました。
2004年には旧・小原村の名誉村民に推挙され、2017年には豊田市名誉市民としてその功績が讃えられました。
愛知県豊田市の北部に位置する小原地区は、和紙の里として知られています。この地での和紙作りの歴史は古く、室町時代に僧・柏庭(はくてい)の教えにより紙漉きが始まったと伝えられています。以来、山間の冷涼な気候と清らかな水に恵まれたこの地では、良質な和紙が生産されてきました。
昭和初期までは「三河森下紙」と呼ばれる、番傘の内貼りなどに使われる実用品としての和紙が盛んに作られていました。しかし、生活様式の変化により傘紙などの需要は急速に減少し、紙漉きの伝統は一時衰退の危機に瀕します。
その転機となったのが、工芸家・藤井達吉(ふじい たつきち)の登場でした。1932年、達吉は小原の紙に目を留め、その素朴で丈夫な風合いに可能性を見出しました。
達吉は地元の紙漉き職人たちに、花や草などの自然素材を紙の原料とともに漉き込む「漉き込み技法」を指導します。和紙を素材としてではなく、見る者の心を癒す工芸作品としての和紙へと昇華させました。
さらに1945年、達吉自身が戦時中に小原に疎開すると、地域の若者たちと共に新たな和紙工芸の道を切り拓いていきます。染色した楮(こうぞ)の繊維を型紙と組み合わせ、色彩と構図を用いて絵画のような画面を作るという独自の手法で、豊田小原和紙工芸を確立しました。
また、達吉は和紙に漆を塗って仕上げる一閑張(いっかんばり)の技術をこの地に伝承しました。
今日では、こうした達吉の精神と芸術観を受け継いだ作家たちが、小原和紙を使って額絵、襖、屏風、一閑張、ランプシェードなど、現代の生活様式に合う美しい作品を数多く手がけています。
愛知県豊田市に『豊田市小原和紙のふるさと』という、小原和紙工芸と伝統的和紙を伝承し、地域文化及び観光の振興や産業の発展に寄与するための施設があります。
和紙原料植物の見本園や遊歩道なども整備されており、和紙漉き体験などもできます。子供の頃に、こちらの施設で色紙サイズの葉すきをしたことを思い出しました。
北岡技芳堂では、山内一生、藤井達吉の作品をはじめ、様々な作家の絵画をお取り扱いしております。ご不明な点などございましたら、お気軽にお問い合わせください。
絵画の買取につきましては、よろしければこちらもご覧ください。
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【山内一生 略歴】
1929年10月4日
愛知県西加茂郡小原村(現・豊田市)に生まれる
1947年
工芸作家・藤井達吉に師事し、和紙工芸の道へ進む
1953年
第9回日展に初入選
1958年
名古屋・松坂屋にて個展開催
1959年
天皇陛下御成婚のお祝いに献上される六曲屏風を制作
1965年
第8回新日展にて特選、北斗賞を受賞
1977年
日本現代工芸展審査員を務める
1979年
日本新工芸展審査員を務める
1982年
愛知県芸術文化選奨、豊田市芸術文化選奨を受賞
1984年
第6回日本新工芸展で文部大臣賞を受賞
1988年
紺綬褒章を受章
1989年
第22回東海テレビ文化賞を受賞
1990年
愛知県文化功労賞を受賞
1992年
第2回日工会展で文部大臣賞を受賞
「東海の作家たち展」(愛知県美術館ギャラリー)に出品
1994年
日本橋・三越にて個展を開催
1996年
地域文化功労者文部大臣表彰を受ける
1999年
中日文化賞を受賞
2001年
「小原和紙三人展」に出品(豊田市民文化会館)
2004年
旧・小原村(当時)より名誉村民に推挙される
2007年
旭日小綬章を受章
2012年
第22回日工会展で内閣総理大臣賞を受賞
2017年
豊田市より名誉市民に推挙される
2024年10月18日
逝去(享年95)