石本武士の木彫を買取いたしました。今回買取をさせていただいたのはお地蔵さまです。柔らかな木肌を活かした彫りと、丁寧に表現された表情には、石本武士のやさしい眼差しと技術の高さが表れています。

蓮台には淡い彩色が施され、静かな華やかさを添えています。お地蔵さまの顔には、まるで幼子のような穏やかで慈悲深い笑みが浮かび、見る者の心を和ませてくれます。

全体として丸みを帯びた造形が特徴で、厳かというよりは、親しみやすい身近な仏としての存在のようです。

石本武士の作品は、仏像や日常の風景を題材にした木彫や銅製の彫刻など、多岐にわたります。特に、木の温もりを生かした一刀彫の仏像や、ユーモラスな表情を持つ動物の彫刻などが特徴的です。

石本武士は1942年に京都に生まれ、1966年から仏師・佐野克州に師事します。仏像彫刻という日本の伝統工芸に深く根ざした修行を積み、やがて仏のやさしさと静けさを湛える表情を自在に彫り出せるまでになります。

彫刻家としての歩みも目覚ましく、京都伝統彫刻家協会展では京都府知事賞を5回受賞し、その力量は早くから高く評価されました。

1981年に、生活と創作の場を京都から信州・穂高へと移します。翌年からは現代彫刻の登竜門ともいえる創型会展（都立美術館）に出品を開始し、選奨を5回、文部大臣賞（1990年）、創型会賞（1992年）、同人優秀賞（1998年）など数々の受賞歴を重ねます。

しかし、2008年には創型会同人を退き、公募展から距離を置くようになります。それは決して活動の後退ではなく、より自分らしい表現を求めて、個展へと軸足を移した決断でした。

その後は、安曇野・穂高のアトリエにて仏師としての仕事に重きを置きながら創作を続けました。木と向き合い、仏と向き合い、そこに込められた祈りや願いに静かに耳を傾けながら作品を生み出しました。

過去には日本橋三越で開催された「木彫秀作展」において、高村光雲や平櫛田中といった名匠たちと並んで出品推挙された実績もあり、その実力は折り紙付きです。

日本美術家連盟会員としても活動を続ける石本武士の作品には、仏教彫刻の伝統と、現代の精神性が絶妙に融合した美しさがあります。

安曇野の自然の中で、仏像に命を宿すように生まれてくる作品は、どれも静けさの中に強い力を秘めています。木を通じて祈りをかたちにするその姿勢こそ、石本の彫刻の真髄なのかもしれません。

北岡技芳堂では、石本武士の木彫や、その他の彫刻家の木彫、ブロンズ、デッサンなどの査定、買取を行っております。ご不明な点などございましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。

【石本武士（いしもとたけし） 略歴】

1942年　
京都に生まれる

1966年
仏師・佐野克州師に師事する

1976年
京都伝統彫刻家協会展、京都知事賞を5回受賞

1981年　
信州穂高へ転居
自然の中で制作を続ける

1982年
創型会展（都立美術館）選奨受賞（5回）

1990年　
創型会展、文部大臣賞受賞

1992年　
創型会賞受賞

1998年　
創型会同人優秀賞受賞

2008年　
創型会同人を退く

現在　日本美術家連盟会員、穂高市在住

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※買取価格は制作年、作風、状態などにより相場が変動いたしますので、掲載されている金額は、ある程度の目安としてご参考にしていただけますと幸いでございます。

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