酒井三良の「雪」を買取いたしました。雪がしんしんと降る様子がよく描かれており、温度や空気感まで伝わってくるようですね。お客様が長年、大切に飾ってみえた作品をお譲りいただきました。誠にありがとうございました。

三良は、特に雪景色が人気があります。市場での評価といたしましては、残念ながら一番高い時期に比べますと、かなりお安くなってしまいました。しかし、その中でも大変出来の良い作品のため、今回の査定結果とさせていただきました。

酒井三良（さかいさんりょう）は、1897年に福島県大沼郡三島町に生まれました。1911年に上京し、同郷の日本画家・坂内青嵐に一時師事しますが、ほぼ独学で画技を磨きます。1917年に故郷会津に戻り、会津若松などの風景を盛んに写生しました。

1914年より日本美術院の研究所生として本格的に日本画を学び始めます。1919年の第2回国画創作協会展に《雪は埋もれつゝ正月は行く》が入選し、一躍脚光を浴びます。これが三良の出世作となりました。

1921年、会津をスケッチ旅行中の小川芋銭と出会い、勧められて再興第8回日本美術院展覧会に出品した《災神を焼く残雪の夜》が初入選し、院友に推されます。この年は、生涯の師と仰ぐ小川芋銭との出合いの年でもありました。以降再興院展を中心に活躍し、1924年には当時最年少で日本美術院の同人となりました。

横山大観・小川芋銭・安田靭彦・前田青邨・奥村土牛という日本美術院同人たちと親交を結び、日本美術の発展につとめました。

1939年、中国を1カ月ほど訪れました。以後は奥村土牛らと京都、奈良、熊野、南紀地方、木曽地方、東北などを旅します。

三良は、五浦の横山大観邸に住んでいた時期がありました。大観邸は1908年に火事により全焼してしまい、これにより大観は五浦を離れました。その後は、五浦の邸宅を再建して別荘として使用していましたが、三良は大観に勧められ、1946年から家族と共に移住し、8年間にわたって五浦で生活をしました。

その間、茨城美術会への参加や茨城県展の審査員・運営委員を歴任するなど、茨城とのつながりを深めていきました。五浦で暮らす三良にとって、岡倉天心邸や六角堂はとても身近な存在でした。

当時、戦後の混乱により、持主である岡倉天心偉績顕彰会（理事長　横山大観）では建物の管理を十分行うことができず、敷地内は荒廃していたそうです。1949年、三良は天心邸の修繕を大観に提案しており、天心が五浦に残した遺産を大切に守ろうとしたことが伝わってきますね。 

1962年、第47回院展では文部大臣賞を受けます。三良は俳人としても知られており、句集や俳画に関する著作のほか、小川芋銭に関する著述も残しています。

晩年は、大都市へと変貌しようとする東京を避けるかのように、茨城県や、生地である福島県を中心に行動し、農村とそこに働く人々を主題に作品を描きました。1969年、慢性腹膜炎のため、大塚の癌研究所付属病院で死去しました。享年72才でした。

三良は生涯にわたり、故郷である会津地方の風物や農村風景、そこに暮らす人々の素朴な生活を題材に、親しみやすくいきいきとした画風で描き続けました。ぼかしを効果的に用いた幻想的な絵画世界は、今も人々から愛されています。主に院展を舞台に活躍し、同人であった小川芋銭や奥村土牛らとは終生交流を持ち続けました。

【酒井三良・画歴】

1897年　福島県大沼郡に生まれる

1914年　同郷の坂内青嵐に師事

1919年　第2回国画創作協会展で初入選

1921年　再興第8回院展に初入選し院友 24年同人となる

1932年　東京都台東区に転居

1939年　中国を旅行

1946年　茨城県北茨城市の横山大観の別荘に転居

1954年　東京都杉並区に転居

1958年　日本美術院評議員、61年監事

1962年　再興第47回院展で文部大臣賞

1969年　東京都で死去

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※買取価格は制作年、作風、状態などにより相場が変動いたしますので、
掲載されている金額は、ある程度の目安としてご参考にしていただけますと幸いでございます。

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