白磁を追及し続けている重要無形文化財指定の陶芸家、井上萬二の壷を買取いたしました。とても美しいですね。白磁は一切の加飾に頼らず、その造形のみで端正さや温かさ、風格を表現しなければならないため、平凡な形が一番難しいとされています。井上萬二の作品の買取については、こちらに掲載させていただいておりますので、よろしればご覧くださいませ。

井上萬二は、1929年に有田の窯元に生まれました。少年時代は大東亜戦争の最中で、早く軍の学校で勉強したいと考えていた萬二は、15歳の時に海軍飛行予科練習生になります。それから2年、過酷な訓練の日々が続きましたが、毎日勉強できるという喜びも感じていました。

一人前のパイロットになる前に終戦を迎え故郷に戻ると、窯の再興を考えた父親から窯元を継いでほしいと告げられます。もともと窯元の家に生まれましたが、当初は自分が継ごうとは考えていなかったそうです。しかし、やるなら徹底してやりたいと思い、7年間無給でひたすら修練を積みます。戦後の世の中が少しずつ豊かになり、みんなが遊んでいる時に、いつまで修行を続けるのか悩んでいた頃、父親の勧めで入った柿右衛門窯で、ろくろ師・初代奥川忠右衛門に出合います。神業的な技術を持ち、この人に近付きたいと思った萬二は粘りに粘って弟子にしてもらい、3年間の下積みで技を磨きました。7〜8年経った頃には、有田でも名が通るほどの技術を身に付けていました。

しかしそこでは満足せず、さらに技術を磨きたいと思った萬二は、有田にある佐賀県立窯業試験場という焼き物の研究機関に入ります。窯業試験場には制作ノルマはなく、陶土や釉薬の研究、築炉、焼成などを徹底的に研究しながら、13年間公務員として務めました。

1969年には佐賀県より米国ペンシルバニア州立大学に派遣され、作陶を指導します。退職後もニューメキシコ州立大学で講座を受け持ち、教授を勤めました。その結果、国内外で指導を受けた受講生は500人以上にもなり、その中には有田焼の第一線で活躍する陶芸家も多く含まれています。

1971年、作陶を始めてから26年の月日が経った頃、自分の世界を築くため42歳で独立、自らの名を冠した井上萬二窯を開きました。

1995年、66歳の時に人間国宝（重要無形文化財保持者）に認定されます。活動は国内だけに留まらず、アメリカ、ドイツ、ハンガリー、モナコ、ポルトガル、ポーランドなど、世界各国で多数の個展を開き、日本の伝統工芸のあり方を伝え続けてきた国際派の作家でもあります。

白磁というのは、端的に言えば白だから白磁ではなく、形がいいから白磁だという考えが原点にあり、「形そのものが文様」と以前語られていらっしゃいました。白磁の世界は完全さが求めらるため、ひたすらろくろの前に座り、一点のゆがみも許しません。自己を厳しく律し、技と心を磨き高め、白磁の神髄を追い求めてきました。

2020年、技術を継承していた長男・康徳さんを病気で失います。大学を出てから長い年月の修練を積み、ようやく後を継いでくれると思っていた時でした。康徳さんに代わり跡を継ぐことになったのは孫の祐希さんでした。陶芸作家として経験を積んでいた途中で、急遽人間国宝の祖父の跡を継ぐことになり、当初は大きな重圧を感じていたといいます。模倣するだけでは伝統にはならないため、その時代の新しいものを作らないといけないと考え、現在は独自の斬新なデザインを施した作品で作家として領域を切り開いています。技と美はこうして伝承されていくのですね。

【井上萬二　略歴】

1929年　佐賀県有田町に生まれる
1945年　十二代酒井田柿右衛門の元で働き始める
1952年　奥川忠右衛門門下生となり白磁や轆轤の技法を学ぶ
1958年　酒井田柿右衛門窯を退社し、県立有田窯業試験場の技官として勤務
1967年 　九州山口陶磁展 文部大臣奨励賞2回
1968年　日本伝統工芸展初入選
1969年　ペンシルバニア州立大学で有田焼の講師（〜76年）
1971年　日本陶芸展入選
1977年　全国伝統工芸展 通産大臣賞
1983年　ニューメキシコ州立大学で美術指導（以後19回）
1986年　佐賀県芸術文化功労賞
1987年　全国伝統工芸展 文部大臣賞、文化庁文部大臣賞作品買上げ
1993年　佐賀県県政功労賞
1995年　重要無形文化財保持者に認定
1997年　紫綬褒章受賞
2003年　旭日中綬章受賞
現在、日本工芸会参与、有田町名誉町民

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※買取価格は制作年、作風、状態などにより相場が変動いたしますので、
掲載されている金額は、ある程度の目安としてご参考にしていただけますと幸いでございます。

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