津田永寿は、日本新工芸の重鎮・鋳金の魔術師と呼ばれる鋳金工芸作家です。帝国芸術院（現・日本芸術院）会員だった津田信夫（大寿）に師事し、津田家の後嗣となります。人形町水天宮・唐獅子一対、迎賓館赤坂離宮・五体立燭台などの代表作があります。

モチーフとなっているにわとりは、日本の神話で神様の使いとされてきました。天照大御神が天の岩戸に閉じこもり世界が闇に隠れてしまった岩戸隠れ。この時に天宇受賣命（あめのうずめのみこと）が舞い踊り、八百万の神が大笑いし、天照大御神が何事かと思い岩戸を開けたところを引きずり出したという話はあまりにも有名ですが、この時たくさんのにわとり（神話の中では長鳴鳥）が集められ、天照大御神の気を引くために天の岩戸の前で鳴き、闇から光を取り戻す一役をかいました。

にわとりの時の声が大神の再現を知らせ、災いを取り払うということから、伊勢神宮ではにわとりが「神鶏」として境内にいます。年々数が減っているようですが、皆様はご覧になったことがありますでしょうか。他にも熱田神宮（愛知県名古屋市）や石上神宮（奈良県天理市）などにも神様の使いとしてにわとりがいるようです。

高岡銅器は、富山県高岡市周辺で作られている銅器です。置物や仏具、花器などの小物から、梵鐘や仏像、銅像といった大物まで様々な物があります。全国にある、町おこしの一環として置かれているアニメキャラクターの銅像の多くも高岡銅器のため、見かけたことがある方も多いかもしれませんね。

高岡銅器は今から400年ほど前の江戸時代、当時、越中・加賀一体を治めていた前田利長公が高岡築城に際し、1611年（慶長16年）に高岡市に7人の鋳造師を迎え入れたことが始まりです。城下の繁栄をはかる産業として、鋳造師たちを中心として鋳物工場を現在の高岡市金屋町につくりました。

最初は、鍋、釜などの日用品、鋤鍬などの農機具製作にはじまり、その後銅器生産がはじまったのは、天保・弘化（1830年～1848年）頃だと言われています。江戸中期には鋳物に彫金を施す唐金鋳物（銅合金）の需要が増加し、特に仏具は一般家庭にも広く求められるようになりました。

明治時代には、オーストリアやロンドン、パリなどヨーロッパで開催された万国博覧会に高岡銅器が多く出品されたことにより世界でも知られるようになり、ジャパネスク旋風を巻き起こしました。明治から大正時代にかけて火鉢、瓶掛、茶道具、置物などの生産が盛んになり、全国に美術工芸品として高岡銅器が認知されると、ギフト需要が高まりさらなる発展を遂げます。1975年（昭和50年）には、日本初の国の伝統的工芸品産地として指定されました。

高岡銅器の特徴は、職人の熟練した手業を駆使した鋳造技術と研磨、彫金、象嵌といった加工技術が施されていることです。技術の融合が豊かな表現を生み、時代と共に発展してきました。高岡銅器の力強さと繊細さ、しなやかさを備え持った造型は見る人の心を惹き付け、時間の経過とともに表情や感触の深みがうまれることを楽しむことができます。

【津田永寿　略歴】

大正4年生まれ
定刻芸術会員、津田信夫（大寿）に師事し、津田家の後嗣となる

福島美術展　審査委員
輸出工芸展　受賞
商工省工芸美術展　奨励賞
鋳金名作　奨励賞
日展（第5回）　特選・北斗賞
平成12年死去

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