2007年6月22日
鬼頭鍋三郎 バレリーナ
絵画というものは、絵の中身が一番大事なわけですが、額もかなり重要な部分を占めていると思います。この鬼頭鍋三郎のバレリーナの作品は、描かれたのが昭和24年~昭和26年の3年間ですので、額装も昭和の匂いのする額装ではないと、なかなか良い気分で眺めることが出来ません。
終戦が昭和20年で、それから5年前後に描かれた作品ですので、その当時バレリーナ、というよりもバレエのお稽古が出来る自体よっぽどのお嬢様ではないかと思います。戦後間もない時期、親に「習いなさい」とでも言われたのか、それとも「私、バレエ習いたいわ」とでも言ったのでしょうか、年のころ20歳前後の良家の子女が見せたバレエ練習後のふとした表情に寂寥感を覚え、その時代に生まれてもいないのにタイムスリップでもさせたかのように哀愁を感じました。この少女はいったいどういう境遇の中で生活していたのでしょう。画家とどこで出会いなぜモデルになったでしょう。いろいろな思いが私の中で交錯しました。
ここで購入した当時の額装と、私が入れかえた額装の違いを拝見していただきたいと思います。
画像ですのであまりつかめないかもわかりませんが、最初の額装は、キンキラ金のバブル時みたいで、まったくあっておりません。しかしちょっと高いですけど京都の額屋大地堂さんに無理を言って、昭和の雰囲気が出るようにしてください、といって作っていただいた額装です。
「藤田嗣治を入れてもおかしくない額装ですよ」と大地堂さんはおっしゃいました。
良くあっているなあ、良くあっているなあと毎日絵を眺め、どういう場所にどのように飾ったらこの絵が生かされるだろうと考えているうちに、やっぱり絵も大事だけど、額装もまた絵の生き死ににもかかわる大事だと改めて思わされました。
そうこういっているうちにバレリーナのお嬢さんはお嫁にいってしまいました。
鬼頭鍋三郎先生は愛知県出身の画家で私が今一番好きな画家です。一番高額作品の舞妓よりも、3年間だけ描かれたバレリーナの方に魅力を感じます。バレリーナを描かれてからしばらくして鬼頭鍋三郎先生は渡仏されたと画集に書いてありましたが、画家の過ごされた昭和初期の時代をうらやましく思い、時間のゆっくり動く画家の世界に私も住みたいと思った今日この頃です。
終わり
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2007年6月21日
梅雨の窓
こんにちは、事務員Yです。毎日暑いですね、入梅し、湿度も上昇中で中々過ごしにくい
季節となってまいりました。
梅雨入りしたということで今回ショップにこんな作品を載せてみました。
その名も『梅雨の窓』...まんまですね、題名が。
作者は大森運夫先生です。ちょっと暗い感じもありますが、Yは一番上のカタツムリが
可愛らしくて非常に気に入ってます。子どもの顔も素朴で、梅雨の窓だけに雨降りなんで
しょうが表情は曇っていない感じがします。カタツムリがいないと未熟者のYにはきっと
『梅雨の窓』に見えなかったでしょう。カタツムリはなんとなく6月のイメージ生物っぽいです。
現実の世界はこの絵と違いどうも雨が少ないようですね、東京地方の貯水池が危ないとか
いろいろ聞こえてきます。確かに雨より晴れのほうがどちらかというと歓迎されますが、この
梅雨の時期ぐらいは降らないとやっぱり駄目なんですね。Yも雨降りが続くと洗濯が~とか
つい思ってしまいますが水があってこそ洗濯できるんですゼ!と言われそうです。
さて、事務員Yは先回申し上げたように丁稚なので毎日が勉強なのは当たり前といえば
当たり前なのですが、画廊に見えるお客様は絵に造詣が深く、博識な方が多いです。
接客していて頷く事しか出来ないこともあります、恥ずかしながら。ですからYにとっては
接客イコール勉強になります。Yがちっとも理解できないような絵についてもお客様との
お話でなるほどなあとまた、違った見方でその絵と向き合えたりもします。やはりお客様と
絵などについて芸術談義をしている店主を見ますと羨ましい限りです。美術商をプロと
しますとその対極にいるお客様はアマチュアという事になってしまいますが玄人跣の
お客様も多いです。そんな方がアマならYなんてどどうなるの?!って思ってしまいます。
けれど丁稚にもこれだけは店主には味わえないという楽しい事もあります。それは『知る』と
いう楽しみです。『空腹』が料理の最高の調味料なら『知る事』は人生の最高の調味料
だなと思います。...無知なのは決して威張れないんですけど(笑)
最後に、この雨の季節、なかなかお出かけすると言う気分になりにくいとは思われますが、
是非『梅雨の窓』を見にいらしてください。題名が題名だけにこの時期ご覧いただくのが格別
かと思われます。窓ごしでなく、お店の中でゆっくりご覧くださいね。
2007年6月13日
ダリの事
はじめまして。事務員Yです。店主に代わりこれから時々お邪魔します。
先日、お店の近くの名古屋市美術館でやっているダリ展に行ってきました。
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2007/dali/
絵画だけでなく、オブジェや写真など画家としてだけでなく芸術家のダリを垣間見る事が出来ました...とえらそうに書いてますがなにせ店主と違いまだまだ絵画や美術品に関しては丁稚な事務員Yです、店主のように専門的説明は出来ません。ただダリの展覧会は老若男女いろいろな層の人が見に来ていました。サルヴァト-レ・ダリの知名度もあるでしょうが普通の日本画や洋画の秀作展や個展とは違う気がしました。
Y的にはすごく面白かったです。ポスターにもなっている作品のようなだまし絵的な「ダブル・イメージ」の作品など、あまりに非日常な世界観なのでこの絵が『わかる』『わからない』といった事より単純に子供のように楽しみました。空想と現実が入り混じったような不思議な世界ですが、そういったものを一つにまとめ作品に仕上げるなんてやっぱりダリは凄いなあと思った次第です。絵の才能が皆無なYといたしましては恐れ多い感想ですが。
そもそもYは絵画よりも先に香水でダリを知りました。唇の形の香水瓶、確か1980年代だったでしょうか。シュールな瓶でインパクトも凄かった。当事まだ学生で当然親に言っても『なに子どもが色気づいてるんだか』といわれてお終いでしたから、たまにデパートにいった時に眺めていました。また、ダリという名前も憶え易かったのでしょうか。
そしてそれから十数年、再び『唇』と巡り合いました。今回はまずはソファでお目見え、しかもその唇の由縁についてはじめて知りました。メイ・ウェストという実在の女性の唇らしいのです。なんとなく唇に座るのは食べられてしまいそうでYとしてはちょっと遠慮しますが。題名も『唾液ソファー』だし。ベタベタしそうなソファーだ。当然、香水瓶も展示されていました。なんだか懐かしい気持ちになりました。
今回、色々な作品が展示されていましたがどの作品にも共通して感じたのが『繊細さ』でした。何にそう感じたのと聞かないでくださいね、丁稚ですからうまく説明できません(笑)
作品は奇抜ですごく面白いんですがなんだか寂寥感を感じたりもしました。
当店にも今、リトグラフの3点があります。名古屋市美術館にお越しの際にでもよってください。
最後ですが店主の言った一言が忘れられません... 『ダリって山pに似てる』
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