日本画家・北野治男の作品を買取いたしました。米国テネシー州の風景を主題とした作品を描き続けたことで有名ですが、こちらは初期頃の作品となっております。黒い背景に浮かび上がってくるように花が描かれており、幻想的な雰囲気ですね。テネシーの風景作品からは、生命の声を聴く作家の姿が見えてきますが、こちらの初期の作品からも同じような印象を受けます。

北野治男（きたの はるお）は、1946年に大阪府に生まれます。京都教育大学特修美術日本画科で学び、画家・西山英雄に師事しました。在学中の1967年、第10回日展に「フラミンゴ」が初入選します。

1970年に同校を卒業すると同門の丹波貴子、曲子明良、坂根克介らと美術団体「真魚」を結成し、2000年代まで長きに渡ってグループ展を開催し、同会の中心的存在として活躍しました。

鳥をモチーフとした作品もありますが、きっかけは1971年に初めて北海道西別の原野を訪れたことでした。大自然に生きるカラスの群れを見て衝撃を受け、それ以降北海道の原野に題材を求めました。主にカラスをメインとした夢幻的な作風から写実を基調とした表現に変化しながらも、大自然の神秘や生命に対する畏敬の念を込めた作品を描き続けます。

日展では1973年に特選を受賞、翌年も同賞と日春展奨励賞を受賞、また「森の中」が連続して特選、同年日春展「幻映」で奨励賞を受賞、順調に中央画壇でのキャリアを積んでいき、1976年には京都市芸術新人賞を受賞します。1977年に初個展を京都朝日画廊で開催し、1983年には日展審査員を務め、翌年日展会員となりました。

1980年代よりアメリカ南部を度々訪れ、テネシー州の自然風景と出会い風景を描くようになります。これ以降、アメリカの自然と対峙し、同地の人々との交流を通じて制作意欲を高めながら、テネシー州の風景画制作をライフワークとしていきます。

日本では2004年「道」で第36回日展会員賞受賞、翌年日展評議員となり、2010年には「樹」で第42回日展内閣総理大臣賞を受賞しました。2013年には、京都府立堂本印象美術館でライフワークの総決算ともいえる素描展「テネシーへの想い　北野治男素描展」が開催され、同年日展理事となりました。京都府文化賞功労賞を受賞し、京都市文化功労者として表彰されたりと日本画界の重鎮となりましたが、2018年に転移性肝がんのため死去しました。

北野治男と言いますと、テネシー州の風景をライフワークとして描き続けている作家ですが、当初は自然に惹かれてテネシーを何度も訪れていました。しかし、そこに暮らす人々や、人と自然とが共存する様に感動し、テネシーへの想いを描き続けるようになったそうです。

牧草地帯などの田園を描いた風景画は、アメリカの画家・アンドリュー・ワイエスと色調やモチーフに共通性を見出され、和製ワイエスとまで表現されることもあります。

夏の湖水の風景などを描いた作品では瑞々しさを感じ、荒涼とした季節を描いた作品では、郷愁を超えた寂寥感が漂ってくることもあります。また、枯れた木や枝の表現の巧みさは特に評価が高いです。西洋画の風景画と同様の視点で描かれながらも、日本画の技法による独特のやわらかさがあり、朧げな空間表現も見られ、日本画の特性がよく出ています。

【北野治男　略歴】　

1946年　大阪市生まれ

1966年　京都教育大学特修美術科日本画入学、西山英雄の指導を受ける

1967年　日展初入選

1970年　京都教育大学卒業、真魚のグループ結成

1973年　日展特選

1974年　日展特選 日春展奨励賞受賞

1976年　京都市美術新人賞

1977年　京都朝日画廊にて個展

1983年　日展審査員

1989年　高島屋（京都･東京）にて、 北野治男展開催（95年･第2回展）

1994年　日展審査員

1998年　京都津田画廊にて個展

2018年　7月29日 逝去、享年71

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※買取価格は制作年、作風、状態などにより相場が変動いたしますので、
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