クリスチャン・ラッセンのラッセングラフの作品を買取いたしました。イルカやハワイの海中風景などを主要なモチーフにし、海と陸の美しい調和など、リアルとイマジネーションが融合しているのが特長です。またラッセンは、南洋の自然をきらびやかな画風で描いたマリンアートの第一人者でもあります。お笑い芸人・永野さんの「ゴッホより～、普通に～、ラッセンが好っき～！」というネタでもおなじみですね。

ラッセンの版画作品には、シルクスクリーン、ミックストメディアなど様々な技法があります。今回のラッセングラフは新しい表現様式となり、見た目は磁器のような滑らかな画面で光沢感があり、スタイリッシュな印象を受けます。ボードにミックスドメディアの技法で刷り、1点1点手彩色を施しています。

クリスチャン・ラッセンは、1956年にアメリカ合衆国カリフォルニア州メンドシーノに、軍人の父と芸術的な才能に溢れた母のもと、五人家族の末っ子として生まれました。

11歳のときに家族でハワイに移り、移住先のマウイ島でサーフィンと出会います。マウイ島で過ごした幼少時代は、抜きん出た描写力を持っていたといわれています。

ラッセンは10代の頃から、観光客向けに作品をギャラリーで販売するようになります。当時住んでいたのは、ハワイのマウイ島西部にあり、マリンアートの聖地としても知られているラハイナでした。

またサーフィンにも熱中し、プロサーファーとして活動を始めます。サーファー兼画家として地元のギャラリーで活躍しました。

ラッセンは1985年29歳の時に、ラッセン・アート・パブリケーションズを設立すると、アールビバンが取り扱いを始め、1989年頃から本格的に日本進出を果たしました。安価な版画やリトグラフをはじめ、ジグソーパズルやポスター、切手、一時期は住友銀行の通帳にもなっており、バブル期の日本で一大現象を巻き起こしてベストセラー画家となりました。

1997年からの6年間だけで、日本全国の約150都市で原画展を開催し、約15万人を動員しました。これまで美術に関心のなかった中間層の心をつかみ、爆発的な人気となっていたことが伺えますね。

一方で、日本での知名度向上には絵画商法が大きく関わっていたため、その販売戦略への反感から、ラッセンは美術界から本流から外れた存在として認識されていました。

2011年3月11日、東日本大震災が発生します。ラッセンは環境保護活動にも熱心でした。海との共生を大切にしてきたラッセンにとって、慣れ親しんだ日本の町を津波が襲った出来事は大変な衝撃でした。ラッセンは欧米人として初めて、震災発生の49日後に被災地をチャリティー訪問したそうです。

平成から令和の時代となり、ラッセンの人生は暗転していきます。2010年代半ばにラッセンの再受容が進んでいた頃、2019年に発生した新型コロナの感染拡大により日本で予定されていた展覧会はすべて中止されてしまい、経済的苦境に立たされることになります。

また2019年12月に警備員をナイフで脅し、その1週間後に木彫りの象で隣人の車の窓を破壊、さらに数日後には元恋人の家に侵入して逮捕され、4年間の保護観察処分を受けました。ラッセン自身は、経済的な問題が不調の背景にあったと語っています。

保護観察処分中の2023年8月、ラッセンをさらなる悲劇が襲います。故郷ラハイナが、気候変動が遠因となって発生した大規模な火災により焼失、多くの人々が犠牲になる取り返しのつかない出来事が起きてしまいました。日本でもニュースでも報じられましたので、記憶に新しい方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ラハイナに自宅とギャラリーを構え、数々の作品を通して故郷の風景を描いてきたラッセンにとって、　とても言い表すことのできない状況が続きました。

絵画商法などで問題になりながらも、ラッセンは日本で一時代を築くほどの人気を博しました。このようなことこらも、ラッセンはとても奇妙な立ち位置にいることが分かりますね。アートの専門知識がなくても楽しむことができたり、作品自体に親しみやすやがあるため、買取の際もよくラッセンの作品と出会います。日本人とラッセンの関係は、もしかすると一過性のものではないのかもしれません。

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※買取価格は制作年、作風、状態などにより相場が変動いたしますので、
掲載されている金額は、ある程度の目安としてご参考にしていただけますと幸いでございます。

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