買取実績
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日本画
下保昭
「霞立つ」
- 買取地区:
- 名古屋市内
- 買取方法:
- 店頭買取
買取価格¥20,000
今回は、下保昭の作品「霞立つ」を買取いたしました。中国や日本の自然を題材にした幽玄な水墨画で知られる日本画家ですが、こちらは初期頃の作品となります。春霞の富士がなんともよいですね。国内外の雄大な風景を取材し、黒色を主体とする画面の中に、大自然の沸き立つ生命観をダイナミックにあらわした作品で高い評価を得て、数々の受賞を重ねました。
下保昭は1927年3月3日、富山県東砺波郡出町神島(現、砺波市神島)の裕福な農家に生まれます。絵心があり、旅絵師とも交流のあった祖父の影響で画家を志しました。
1943年、1944年に京都絵画専門学校(現、京都市立芸術大学)を受験し、学科と実技は合格しますが、正科であった軍事教練の成績が悪かったため不合格となってしまいます。1944年、隣町にある呉羽航空に徴用されますが、1945年の終戦を機に京都と富山を頻繁に行き来し、家人の知り合いであった石川県松任出身の日本画家、安嶋雨晶を訪ねます。
1946年、第1回富山県展に出品した「白木蓮」が最高賞の富山市長賞を受賞、その後も受賞を続けます。これを機に画家として身を立てることを改めて決意し、安嶋雨晶の紹介を受けて、1949年に画塾青甲社に入社します。そこで京都の画壇で活躍していた西山翠嶂に師事することになりました。
京都へ出て下宿するようになった頃、京都市内の博物館や美術館へ行き、池大雅や浦上玉堂、富岡鉄斎等の作品に接します。画塾で開かれる月一回の研究会に出席する傍ら、大阪釜ヶ崎のドヤ街や横浜、長崎、鹿児島等の港町を転々とし、終戦後の貧民街や場末の風景をスケッチしました。
1950年、第6回日展に初入選、イギリスの画家ベン・ニコルソンの感化による構築的な作風により、以後入選を重ねます。1954年第10回日展、1957年第13回日展でともに特選・白寿賞を受賞、1961年第4回新日展で菊華賞を受賞、翌年日展審査員をつとめ会員となります。この頃から大自然と対峙し、そのエネルギーを孕んだ心象風景を描くようになりました。
1962年に日本橋高島屋で初個展を開催します。1967年第10回新日展で「遙」が文部大臣賞を受賞し、1969年には日展評議員となりました。この間、1963年第7回日本国際美術展、1964年第6回現代日本美術展に招待出品、街並みを描いた初期の構築的な作品からモノトーンの風景表現を経て、水墨を基調とした幽玄微妙の山水画へと移行し、現代の水墨表現の可能性を追究していきます。
1981年より何必館・京都現代美術館において度々個展発表を行なうようになります。1983年中国の壮大な自然に触発された「水墨桂林」連作、翌年には「水墨黄山」を発表し、1985年新鮮な水墨画の開拓を試み、力と生彩に富む独自の表現をつくり上げたとして芸術選奨文部大臣賞を受賞しました。
1985年に芸術選奨文部大臣賞を受賞、1987年には富山県立近代美術館で回顧展を開催し、精力的に活動をしていきますが、1988年に画業に専念するため日展を退会、無所属となります。少し前から水墨画に可能性と魅力を感じていたようで、退会後は水墨画に専念し、山水をテーマに据えてその表現技法を追求していくこととなります。
中国の壮大な自然風景を題材にした「冰雪黄山」などの中国山水シリーズは、独自の水墨画の世界を確立しました。対して日本の山水シリーズでは「華厳」「黒部秘境」などの作品が有名で、日本の風土特有のたおやかな優しさと霊的なものの表現に力を注いでいます。日本の山々が持つ人を拒絶するような、どこか畏怖をも感じさせる雰囲気を水墨の濃淡で見事に表現しています。
1993年に作品100点が何必館・京都現代美術館の梶川芳友館長より富山県へ寄贈され、1999年に開館した富山県水墨美術館に常設展示「下保昭作品室」が設置されました。こちらには、作家自身から「日本の山水」シリーズの作品なども寄贈され、合計約150点の作品が収蔵されています。
数年前、富山のお客様宅へ買取でお伺いした帰り道に、富山県水墨美術館へ立ち寄ったことがありました。「下保昭作品室」は、館内の一番奥にあります。照明は少し落としてあり、薄暗い中から作品が浮かび上がってくるようで、幽玄な世界をたっぷりと堪能してまいりました。「下保昭作品室」では展示替えを行いながら、60年に及ぶ画業の大要を知ることができるコレクションを鑑賞することができます。
長年所属していた日展を退会してしてからは、自己の内面を色濃く反映させた墨による表現が主流になり、静謐で気迫ある深遠な水墨画の世界を確立していきました。その後はより自由に、かつ精力的に作品制作に取り組み、数多くの個展を開いていきます。
2018年18月7日、肺がんのため京都市の病院で死去、享年91でした。
岳父が小野竹喬ということもあり、私生活でも日本画に深く関わりがある生涯でした。下保昭は作品の中に風や匂い、温度、音など、目には見えないものや聞こえないものを水墨画で表現しようと挑み続けました。そこには自然に対する愛情だけでなく、畏敬の念があったのかもしれません。
1927年 富山県砺波市に生まれる
1949年 西山翠嶂に師事
1950年 日展初入選
1954年 日展特選・白寿賞
1961年 新日展菊花賞受賞
1967年 新日展文部大臣賞
1970年 43歳で日展評議員に選任される
1982年 近江八景の連作が日本芸術大賞
1985年 水墨黄山の連作が昭和59年度芸術選奨文部大臣賞
1988年 日展を退会する
1990年 MOA展岡田茂吉大賞
1990年 京都市文化功労者となる
1997年 京都美術文化賞
2000年 海門山萬月寺浮御堂(大津市本堅田)に八面の襖絵「紫気東來」を奉納
2004年 旭日小綬賞を賜る
2018年8月7日、肺癌のため死去、享年91歳
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※買取価格は制作年、作風、状態などにより相場が変動いたしますので、
掲載されている金額は、ある程度の目安としてご参考にしていただけますと幸いでございます。
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