買取実績

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張月樵「百鼠遊戯之図」

掛軸

張月樵
「百鼠遊戯之図」

買取地区:
名古屋市内
買取方法:
店頭買取

買取価格¥50,000

今回は、とても面白い掛軸を買取いたしました。張月樵の「百鼠遊戯之図」です。たくさんの鼠が戯れていますね。鼠は才知に富み、七福神の大黒天の使者であることから財を蓄える富の象徴 とされ、多産なので子孫繁栄の象徴にもなり、大変縁起の良い動物として描かれてきました。「百鼠」で意味を調べますと、江戸時代に生まれた「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」という言葉が出てきます。幕府が倹約令を出して庶民に華やかな装いを禁じたところ、着用を許された茶色、鼠色、藍色を微妙な染め分けをして多くの色を考案、町人たちはおしゃれを楽しんだそうです。 そんな多彩に着こなす姿は粋と表現されました。この時にできた膨大な色のバリエーションを「四十八茶百鼠」というそうです。
 
張月樵(諱は行貞、字を元啓、通称を晋蔵、別号に酔霞堂)は、江戸後期の文人画家で名古屋で活躍しました。1765年、彦根城下の表具師・総兵衛の子として生まれます。幼いころから画を好んでおり、同郷の市川君圭に南画を習い、その後京都に出て与謝蕪村門下の松村月渓に師事し、師の号から一字とって「月樵」の号を与えられます。

蕪村死去後、師である月渓が円山応挙の門に移り「呉春」と改号して四条派の祖となります。月渓の画風は蕪村風の精神性豊かな文人風の筆法と応挙の写生を追及した筆法が融合し、平明だが感情が溢れる画風を確立しました。月樵も応挙の影響を受けたと思われ、応挙、呉春の写実的な画風に誇張を加え、華やかさや面白さを追求した独自の画風を確立していきます。応挙門下の長沢芦雪とは特に親しかったようで、応挙没後の1798年(寛政10年)頃に連れ立って旅に出ています。二人は京都から美濃まで旅を続けますが、帰途、月樵は芦雪と別れ尾張名古屋に留まり、名古屋における南画中興の祖と言われる山田宮常の画風を追求しました。名古屋菅原町(現名古屋市西区)の雲岳院に居住し、後に富士見が原(現名古屋市中区上前津)に寓居を求めす。1812年に結婚し、翌年一子卯之助(後に月載、又は晋斎と号し絵師として父を継ぐ)が誕生します。

当時の名古屋画壇は、後に京都で活躍する中林竹洞、山本梅逸をはじめとする南画系の絵師たちが台頭してきており、その中心にいたのは尾張南画中興の祖と称される山田宮常です。月樵は宮常に傾倒して名古屋に住み着き、尾張徳川家の御用絵師として御用支配の役職を賜り、名古屋城内の杉戸・屏風・襖に覇気がある花鳥山水画を多く描きました。俳人や戯作者など幅広い文化人と交流も広げ、多くの人々から愛された引っ張りだこの人気絵師でした。月樵は帯刀も許されていたようです。藩主から将軍家献上品として「孔雀と菊図」を描いたところ、江戸南画の大物谷文晁の目にとまり激賞を受けると、共に江戸へ来るように再三手紙にて勧められましたが、月樵は名古屋を離れることはありませんでした。

張月樵は、人の目を驚かす構図や豊かな生命観、癖の強い奇怪な表現を得意としましたが、それでいて作品全体は絶妙ななバランスが保たれています。中国の明清時代の癖の強い絵や、円山応挙、長沢芦雪などの画風を継承しつつ、親しみやすさを加えた独自の世界を作り上げました。円山応挙が生み出した写実的な画風を、月樵は名古屋にいち早く伝えた絵師の一人とされ高く評価されておりますが、名古屋を中心に活動していたため全国的な知名度は高いとはいえないかもしれません。それを嘆いた俳人の正岡子規は、病床六尺の中で「月樵ほどの画かきは余り類がないのであるのに、世の中の人に知られないのは極めて不幸な人である。」と月樵について記しています。1832年7月19日(旧暦)天保3年6月22日)61歳で名古屋にて没し、長栄寺(名古屋市千種区)に葬られました。

 

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※買取価格は制作年、作風、状態などにより相場が変動いたしますので、
掲載されている金額は、ある程度の目安としてご参考にしていただけますと幸いでございます。

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