今回、鑑定して買取りをさせていただいたのは、中村宗弘の「春朧」10号です。朧月と桜がなんとも美しい作品です。春のぼんやりとかすんだ薄い光の月や、少し肌寒い空気まで伝わってきそうです。繊細で甘美な作品にうっとりとした気持ちになりました。
中村宗弘の父は美術評論家の中村渓男、祖父は日本画家の中村岳陵です。名門である慶應義塾大学出身者であり、慶應義塾幼稚舎から通っていました。15歳で祖父中村岳陵のもとで絵画修行に励み、高校入学後に本格的な画家修業を始めます。高校3年生の頃に「早春」が日春賞、「翠明」が特選・白寿賞を受賞し、若くから活躍なさっており、21歳で東山魁夷に師事します。祖父・中村岳陵から学んだ線の大切さと、師である東山魁夷から学んだ色の配置やアングルの捉え方などが存分に活かされ、四季折々の日本の風景や、雄大な富士の姿など、精密かつ繊細に描く日本画家として知られています。

【中村宗弘　略歴】

1950年　神奈川県逗子市に生まれる
1965年　祖父・中村岳陵（文化勲章受章）に師事
1968年　高校3年生の時、第3回日春展に「早春」初出品、日春賞受賞
                 第11回新日春展に「翠明」を初出品し、特選・白寿賞受賞
1969年　「早晨」で第4回日春展にて奨励賞受賞
                 第1回日展「月鐘」を無鑑査出品し外務省買い上げとなる
                 祖父・中村岳陵逝去
1970年　第5回日春展「朝霧」奨励賞受賞
1971年　第6回日春展「冬」日春賞受賞
                 児玉希望の推挙により、東山魁夷に師事
1973年　慶應義塾大学文学部東洋史学科卒業
1975年　日展会友に推挙される
1976年　26歳で日展会友となる
2015年　日蓮とのゆかりがある大田区池上の本行寺で客殿が新築され、描き下ろした壁画「清宵」を奉納

その後は全国各地で個展を開催、また日本画の普及活動にも力を注ぎ、海外での講演活動も精力的に行われています。さらにチャリティにも力を入れ、阪神大震災チャリティー絵画展(1995年)を主催、東日本大震災チャリティオークション(2011年)にも参加なさっています。

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※買取価格は制作年、作風、状態などにより相場が変動いたしますので、掲載されている金額は、ある程度の目安としてご参考にしていただけますと幸いでございます。

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