今回買取をさせていただいた石井柏亭は、明治15年3月28日に東京下谷区に生れます。祖父は船橋市出身の日本画家鈴木鵞湖、父は日本画家の石井鼎湖、弟は彫刻家の石井鶴三という芸術家の家庭に育ちました。若くして父鼎湖に日本画を学び、日本青年絵画共進会、日本美術協会などに日本画を出品します。後に大蔵省印刷局に入り彫版、水彩画を学びます。

明治31年には浅井忠の門に入り洋画を正式に学び、浅井忠の渡欧後は中村不折の指導を受けました。一時東京美術学校に入学しましたが、眼疾のため1ケ年で退学します。新日本画に興味を持ち、結城素明、平福百穂等の无声会に加わり日本画を発表、さらに明治35年からは太平洋画会に洋画を出品して会員となりました。

洋画家として油彩画だけでなく、水彩画、版画、日本画と幅広く作品を残しました。作品は、油絵、水彩画、日本画など数多いですが、いずれも淡々とした色調と軽快な筆致に日本的な独自の画風が表れています。さらに、歌人、詩人、美術評論家、著述家、教育者としても活躍しました。文芸活動にも関心を持ち、1902年に雑誌『明星』の挿絵やその他の雑誌に時評、詩などを発表しました。1907年には、山本鼎、森田恒友と雑誌『方寸』を創刊します。

木版画制作にも注力し、日本の版画運動の先駆者的存在となりました。1935年に沖水彩画用紙製造所が開発した水彩画および版画用紙のMO紙の命名者でもあります。石井柏亭が近代美術の発展につくした功績は大きいのではないでしょうか。
　

【石井柏亭　年譜】
1882年　東京に石井重賢(鼎湖)の長男として生れる
1895年　神田の共立中学を退学、大蔵省印刷局の彫版見習生となる
1896年　印刷局同僚の水彩画を見て独習する
1898年　絵画修業のため浅井忠研究所へ入門、明治美術会10周年展に水彩画出品
1899年　将来画家として立つことを決心、はじめて油絵を試みる
1900年　新日本画に熱中、浅井渡欧のため中村不折の指導を受ける
1902年　結城素明の紹介で「明星」に挿画を寄稿、後に時評や詩も寄せる
1904年　春印刷局を辞し、中央新聞杜に入社、挿絵を担当、東京美術学校洋画科選科に入り藤島武二に師事する、第1回文展より毎回出展する
1905年　慢性トラホーム悪化のため新聞杜及び美術学校を退き、大阪に赴き療養する
1907年　森田恒友・山本鼎と文芸美術雑誌「方寸」を創刊
1908年　北原白秋、木下杢太郎らと文学サークル「パンの会」創始
1910年　12月仏船ポリネシアン号で渡欧、2年後に帰国する
1911年　エジプト、イタリアを経てパリに滞在し冬に渡英する、水彩画の制作多数
1913年　国民美術協会を結成、丸山晩霞等と日本水彩画会を創立、大阪で佐々木加代と結婚
1914年　文展二科設置運動に加担したが建議不調のため同志と二科会を創立
1921年　西村伊作等と文化学院を創立
1922年　東大工学部講師、平和博覧会審査員となる、12月シベリア丸で米国経由渡欧の途につく
1928年　フランス政府よりレジオン・ドヌール勲章受章。
1935年　二科会の作品を展観するため藤田嗣治等と渡満、帝国美術院会員となり二科会と訣別
1936年　山下新太郎、安井曾太郎らと一水会を結成
1937年　帝国芸術院会員
1956年　ブリヂストン美術館で回顧陳列、十二指腸潰瘍のため金沢大学附属病院に入院手術
1958年　12月29日尿毒症のため東京女子医大病院において逝去、享年76才

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※買取価格は制作年、作風、状態などにより相場が変動いたしますので、掲載されている金額は、ある程度の目安としてご参考にしていただけますと幸いでございます。

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