東郷青児は鹿児島に生まれ、東京を拠点に二科会で活動した洋画家です。
日本の前衛美術の先駆者にして、戦後は大衆にもっともよく知られた洋画家ではないでしょうか。

長い間二科展のリーダーでしたが、その本領は多くの人々の目に触れる雑誌の表紙や商品の広告や包装紙、そしてデパートや劇場の壁画、緞帳にありました。

青山学院中学部在学中から画才を発揮し、19歳で描いた　≪パラソルさせる女≫（1916年）は、初出品にして二科賞を受賞し、日本美術界で最初期の前衛絵画とみなされています。

1921年、24歳から7年にわたるフランス滞在では、ルーブル美術館で見たレオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロ、ボッティチェリなどの甘美な女性像に感銘を受けました。
ピカソからは独自のスタイルを貫く姿勢を学び、西洋絵画の伝統技法を研究するほか、仕事を通じて装飾やデザインも習得しました。
この時代、フジタや竹久夢二らの人気作家の影響を受けつつも、一派、一流に従って描く事を否定し、帰国後は「青児美人」とも称される甘美で幻想的な女性像を確立し、文筆や壁画、挿絵、装丁など多彩に活躍の場を広げていきました。

【東郷青児　年譜】
1897年　鹿児島生れ
1910年　青山学院中学部入学
1916年 　第3回二科展初出品、二科賞
1921年　フランス留学
1922年　リヨン美術学校の専科に学ぶ
1928年 　帰国、昭和洋画奨励賞
1938年 　二科会に「九室会」が結成され、藤田嗣治とともに顧問になる
1957年　日本芸術院賞、’60年同会員
1961年 　二科会会長
1969年 　フランス政府より芸術文化勲章(オフィシェ)
1976年 　勲二等旭日重光章、東郷育児美術館開設
1978年　 熊本で客死、享年80歳
　　　

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