買取実績
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掛軸
木島櫻谷
「月下老狸図」
- 買取地区:
- 春日井市
- 買取方法:
- 店頭買取
参考価格¥40,000
木島櫻谷「月下老狸図」の掛軸を買取いたしました。櫻谷は、明治から昭和初期にかけて活動した、四条派の日本画家です。
たぬきの毛の描写を控えめにすることで、写実性とともに、老狸の内面や哀愁が見事に表現しされています。叙情的に描かれ、擬人化されたような親しみが感じられます。この老狸は、櫻谷自身だったのでしょうか。
1877年、木島櫻谷(このしま おうこく)は、京都三条室町の商家に生まれました。祖父・周吉の代から内裏に高級調度を納入する店を興し、父・周吉もその店を継いでいました。
父は絵や和歌、茶の湯に造詣が深く、木島家には彼を慕った芸術家や知識人の来訪が絶えなかったといいます。その中には、陶工・永樂保全や篆刻家・茶人の山本竹雲、そして岸派の絵師・岸竹堂がいました。
曽祖父・元常は、狩野派の絵師・吉田元陳の弟子で、京都在住絵師の多くが参加した寛政期の内裏造営障壁画制作にも名を連ねています。
櫻谷は、地元の明倫尋常小学校へ入学します。同級には、久保田金僊や森本東閣(幸野楳嶺の子)、洋画家になる芝千秋がいました。
下京区高等小学校を経て、京都府立商業学校予科へ進みましたが、簿記や算術に興味を持てなかったため中途退学します。
1892年16歳の時に、精緻な花鳥画で当時京都きっての人気作家であった今尾景年に弟子入りました。
景年は「櫻谷」の号を与え、早くに父を亡くした桜谷の父親的存在でもありました。同じ頃には、儒医・本草学者・写生画家だった山本渓愚(やまもと けいぐ)に儒学などを学びます。
もともと文学少年だった櫻谷は「論語読みの櫻谷さん」と呼ばれるほどの読家となり、昼は絵画制作、夜は漢籍読書の生活を送っていました。
櫻谷は徹底した写生を基礎に、卓越した技術と独自の感性によって叙情的で気品ある作品を数多く生み出し、景年塾を代表する画家として成長していきました。
1897年に景年塾を卒業し、展覧会への出品が増えていきます。四条・円山派の流れを汲んだ写生を基本とし、初期は動物画を得意としていました。
1899年に全国絵画共進会に出品した『瓜生兄弟』は宮内省買い上げとなり、櫻谷の出世作となりました。1903年の第5回内国勧業博覧会出品作『揺落』も天皇買い上げとなり、画題も花鳥画、山水画、歴史人物画へと広がりをみせます。
20代から30代にかけては、頻繁に写生旅行に出かけていました。何よりも写生を重んじていた櫻谷は、日々大原や貴船など京都近郊に足を運び、毎年数週間にわたる旅行で山海の景勝の写生を重ねました。
現在、わかっているだけでも600冊に及ぶ写生帖があり、夢中になった日本の風景は細部まで丁寧に描かれており、とても見応えがあります。その成果は、西洋画の空間感覚も取り入れた近代的で明澄な山水画にしっかりと現れています。
文展では、1907年の第1回から第6回まで二等賞4回、三等賞2回と連続受賞し、早熟の天才という印象を周囲に与えました。理由としては、櫻谷の画才の他に、作風が展覧会の時代にうまく適合していたからとも考えられています。
様々な展覧会が西洋建築による大空間で頻繁に開かれるようになると、多くの観者が一度に見られる作品の要求が高まりました。
また文展では、応募作品に大きさの制限はなかったため、画家たちは出来るだけ大きな画面で制作する必要性を感じ、伝統的な屏風絵に注目をしていました。
そうした中で櫻谷は、左右を対として描かれることが多い屏風絵を、連続する一つの絵画空間として捉え、横長の画面を動勢感のある充実した構図で描き出しました。
1912年に京都市立美術工芸学校(現:京都市立芸術大学)の教授を委嘱され、1913年には37歳で早くも文展の審査員に挙げられました。同年、京都市街北西の衣笠へと移住します。
竹内栖鳳と京都画壇の人気を分け、華々しく注目される作家となりましたが、師・景年の過剰なまでの推薦が反動となり、画壇から嫌われ審査には激しい毀誉褒貶が付きまとったようです。
黙して語らず「耳が聞こえない」という意の別号「聾廬迂人(ろうろうじん)」を用いたのもこの頃でした。
櫻谷の熟達した筆技も過小評価され、再び台頭することはありませんでしたが、絵の依頼は絶え間なく制作数は多かったようです。
50歳前後で公職からひき、1933年の第一四回帝展に『峡中の秋』を最後に衣笠村に隠棲します。祇園などに遊びに行くこともせず、野人と呼ばれるほど粗末な服をまとい、漢詩に心を寄せつつ制作に励み、自邸で文人のような暮らしをしていました。
しかし徐々に精神を病み、1938年11月3日、枚方近くで京阪電車に触れ非業の死を遂げました。享年62でした。
弟子には、西村柳塢、今井松窓、榊原虹泉、熊谷雲裳、前川秋帆、由井漱泉、池田瑞月、池田翠雲、竹中椅堂、小林雨郊、野崎三湖、浜孤嘯などがいます。
櫻谷は、京都画壇を代表する存在として、近年再評価が進んでいる日本画家の一人です。リアリティあふれる動物画の名手として知られていますが、生涯山水画を描き続けていました。
幼い頃より漢詩や古画を愛した櫻谷は、次第に中華文人の理想世界を日本の風景に移し替えたような、親しみやすい新感覚の山水表現に辿り着きます。
京都の伝統を継承しながらもその枠内に留まらず、西洋画の要素をも取り入れたスタイルが大きな特徴です。作品からは対象への深い洞察や愛情が感じられ、観者に安らぎや心地よさを感じることができます。
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※買取価格は制作年、作風、状態などにより相場が変動いたしますので、
掲載されている金額は、ある程度の目安としてご参考にしていただけますと幸いでございます。
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